声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
 そう思うと胸の奥がきゅっと締め付けられるような感覚に陥ります。

「ローゼ、勉強でもはじめようか。これはね──」

 お兄さまは私にいつものように本を見せながら言葉や意味を教えてくださいます。


 そんな風にお兄さまの声を聞いていると今日は段々眠くなってきてしまって。
 いけない、勉強をしないと、と思うのですが、眠気には抗えず、うとうとと段々瞼が重くなってしまいました。

「ローゼ?」

 お兄さまがそんな風に呼んでいたような気がするのですが、私はもう夢の中に入ってしまいました──
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