崖っぷち告白大作戦⁉︎〜彼氏と後輩に裏切られたら、何故か上司に寵愛されました〜
***

 いつものように天莉(あまり)が作った夕飯を美しい所作で食べながら、(じん)が唐突に手を止めて言った。

天莉(あまり)、近いうちにキミのご実家へ、挨拶にうかがいたいんだが……」

「えっ」

 そこで初めて、尽が結婚に際してそんなことを言っていたのを思い出した天莉だ。

 今日のメニューは鮭とほうれん草とキノコが入ったクリームパスタ。
 食べる直前にお好みで粉チーズを振りかけたそれをチュルリと吸い込んで、天莉は目の前の尽を見詰める。

「お互いの家に挨拶が済むまでは入籍はしないって話したよね? 覚えてる?」

 無論尽が言っているのは猫柄が可愛い婚姻届の方だ。断じて小豆色の方ではない。

 その証拠に――。

「《《空けたまま》》にしてある証人欄も、挨拶がてら片方は天莉のご両親のどちらかに、もう片方は俺の父親に埋めてもらう予定なんだが」

 挨拶をしたその足で婚姻届まで持ち出す気満々らしい尽の言葉に、天莉は今度こそ瞳を見開いた。

 さすがに「初めまして。お嬢さんとお付き合いさせて頂いています」からの、「つきましては婚姻届(こちら)に署名捺印をお願いしたいのですが」は、余りにも急展開過ぎて実家の両親が付いてこられない気がする。

高嶺(たかみね)常務のご両親は……初めましての挨拶と同時に結婚します!って宣言されても平気なんですか?」

 やんわりと、「それ、おかしいですよ?」と指摘したつもりの天莉だったのだけれど。
< 115 / 351 >

この作品をシェア

pagetop