崖っぷち告白大作戦⁉︎〜彼氏と後輩に裏切られたら、何故か上司に寵愛されました〜
(5)俺も今夜はお前ん家に
璃杜(りと)は快くOKしてくれました。……玉木(たまき)さん、お聞きのように僕は高嶺尽(その男)とは違って身持ちの堅い妻帯者です。家には愛する妻だけではなく可愛い娘も待っています。泊まりに来るなら断然我が家の方が安全だと思いませんか?」

 電話を切るなり、今までは天莉(あまり)を放置して自分を説得対象にしていたはずの直樹(なおき)が、先程までの甘々な雰囲気とは一変。
 きりりとしたいつも通りの声音で天莉にそう声を掛けるから。

 (じん)は正直焦らずにはいられなかった。

 だって――。

 あろうことか、尽が何度誘っても(かたく)なに泊まりを拒否していた天莉が。
 まるで直樹の声のギャップと、家族持ち安全牌(あんぜんぱい)マジックに(かか)ったみたいに「はい」と答えてしまっていたからだ。


「――待ちなさい、玉木さん。別に直樹(なお)を悪く言うつもりはないが、よく知りもしない男の言葉をそんな簡単に信じて……そう易々と宿泊をOKするのはどうかと思うぞ? 上司として老婆心ながら言わせてもらおう。ひょっとしてキミは今、体調不良で危機管理能力が鈍っているんじゃないかね?」

「えっ……?」

 キョトンとした顔で自分を見上げてきた天莉から、『お言葉ですが高嶺(たかみね)常務。……それ、思い切りブーメランだと思うんですが』と言われかねないセリフを吐いて。

 自分でもそんなこと百も承知だった尽は、天莉がそう反論してくる隙を与えないよう、すぐさま彼女に伊藤家への宿泊を考え直すよう畳み掛けるべく、物理的にも詰め寄ろうとしたのだけれど。

「尽。それ、お前にだけは言われたくないんだけど?」

 忌々(いまいま)しいことに、直樹の方からもっともな反論をされて。
 そればかりかさり気なく天莉との間に割って入られてしまった。

 そうしてそのついで。

 スッと耳元に唇を寄せられて、
「尽。これ以上不用意に彼女へ触れてみろ。僕だってお前を守り切ってやれる自信はないからな? 今そんな馬鹿な真似をして《《彼ら》》につけ入るに隙を与えてやるだなんて、お前はどれだけお人()しなの?」

 そう(ささや)かれてしまっては、引き下がらざるを得ないではないか。
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