排他的に支配しろ
《心理》





「どこに行かれるのでしょうか」



 ピタ、と足を止める。

 玄関の扉に向かって歩くわたしを止めたのは、光峰さんだ。

 背中を向けたまま、後ろからの圧に耐える。



「どうしても必要な外出なら私が同行します」

「……大丈夫です」



 今朝、春日さんに用事があると聞いてから何度も様子を確認して、やっとタイミングを見つけたというのに。



「……ここが窮屈になりましたか」

「違い、ます」



 一晩考えた。

 穏便に済ませるなら、わたしがどうにかするのが一番だと思った。


 キョウダイに、わたしから会いに行く。


 百鬼さんが見つけるより先に。春日さんと会ってしまう前に。

 そして話をしよう。彼の目的を聞いて、危険性がなかったら春日さんの元へ一緒に行けばいい。

 春日さんから離れたいなんて、そんなこと……あるわけない。



「……“来ないでください”」



 顔だけ振り向き、わたしは口を開いた。

 近付こうとしていた光峰さんの動きが固まる。


 街を歩くほとんどは、KEEP OUTの人達。

 惜しみ無く“命令”を使ってキョウダイの情報を集めればいい。



「待って、ください。春日様は今、臨さんのために──」



 光峰さんの忠告を無視して、自分の手で扉を開く。


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