排他的に支配しろ


 地面が柔らかくて、立てているかわからない。頭がぼーっとして、呼吸の仕方がわからない。

 ぐにゃりぐにゃり、全てが歪み始める。


 みんなは、死んでしまったのだろうか。


 どうして?


 気分は悪い。

 それでも、思考は今までにないほど明瞭だった。


 みんな、何らかのきっかけによって研究所に自由がないことを知ったのだ。


 嘘を見抜いて。

 悪意に苦しめられて。

 間違いに気付いて。



「りん」



 遥か昔、最初にわたしの名前を教えてくれたのは、父でも母でもなく先生だった。

 でも、名前を付けてくれたのは父と母なんだって。その先生はわたしに伝えてくれた翌日にいなくなったけれど。

 みんなにも名前があって、教えてくれる人がいたらよかったのに。



「──りん」



 だって、こんなに甘美な気持ちになれる。


 温もりに包まれた。

 苦味のある香りが辺りに漂い、ようやく空気を吸っているのだと実感する。



「どうした、何が、」

「煙……が。みんなが……」

「……! 煙草か。……ごめん」



 遠のいていく意識を引き戻すみたいに、温もりはわたしを強く閉じ込めていた。


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