排他的に支配しろ
《夢中》




 頭から被ったお湯は、頬を滑って顎から落ちていく。

 まつげに乗った水滴を眺めながら、わたしはシャワーを借りる前の出来事を思い返していた。




「りん。こっち来て」



 娯楽室で花札を終えた後。花之木さんとピンク髪の人が帰り、光峰さんは夕食の準備。部屋はわたしと春日さんの二人になった。

 春日さんに手招きされ一歩近付くと、壁に背中を押し付けられる。

 顔が目と鼻の先になって、顎をそっと支えられたのだ。



「目、瞑って?」

「え……?」

「口寂しくなっちゃった」

「あ……」



 何をしたいのか、すぐに察した。

 確かに、いつでもいいと言ったのはわたしだ。

 ただ、こんなに早いなんて思っていなくて。

 戸惑いをかき消すように、慌てて目を閉じて口を結んだ。



「──っん、」



 そっと触れた唇は、しばらく押し付けたまま。

 離れたかと思うと、角度を変えてまたくっつく。

 体はぴったりと密着していた。壁と春日さんに挟まれて、動きは塞がれている。

 終わったときの熱い息が、顔全体の温度を上げた。


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