排他的に支配しろ


 相変わらず何に使うものなのか見当もつかないけれど、あんなのでいいのなら。

 近くで一番溜めている人の元へ行って、声をかける。



「すみません。“それ、ください”」



 わたしの“命令”で、いとも簡単に手に入った。



「はい、もらいました」

「待った待った待った。え? あんたも、なんであげた?」



 聞かれた元の持ち主は「……くださいって言われたから?」と答える。

 わたしがくれと言えば、くれる。これはそういうものなのだけれど。

 何かよくないことだっただろうか?



「いらないんですか?」

「いらないでしょ……。普段なら大歓迎だったけど、さすがにあっさりしすぎてて怖いから」

「そうですか……」



 わたしも必要としているわけではないので、持ち主に戻すことにした。

 ほしいと言ったりいらないと言ったり、ならどうすればよかったのだろう……。


 悩んでいる内に、救世主はわたしから離れようとしていた。

 まだお礼はできていないというのに。



「待ってください、他にほしいものなどは」

「いいって。俺もう帰るから」



 は……、と息を呑む。

 そうか。この人には帰るところがある。


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