大食いパーティー、ガーデンにて奮闘する
7皿目 海王魚のカルパッチョ
「もうああいうのは二度と御免よ」
 ガーデンの門を出たところでリリアナが涙目で鼻をすする。

 今日は依頼を受けていたわけではない。
 美味しいものが食べられるならどこでもいいと言った自分にも非はあると思う。
 だけどね……。
「虫だらけのエリアって、なによおぉぉぉっ!」

 転送された途端にバッタ型の魔物の大群に襲われ、逃げることもできずに戦わなければならなかった。
 いや、バッタならまだマシだ。
 虫嫌いのリリアナにとっては言葉にするのもおぞましいアレやアイツまでいた。

 ハリスは仕留めた獲物をいつものように調理しようと張り切っていたが、それを断固拒否して戻ってきたリリアナだ。
「……お腹すいた」
 美味しいものが食べられる場所へとお願いしてあのエリアに転送されということは、あの昆虫どもは見た目を我慢して食べればとても美味なのかもしれない。

 いやいや、無理! 無理だからっ!
 リリアナはコハクをギュッと抱きしめて首をブンブン横に振る。
 
 そんなリリアナの肩をポンと叩いたハリスが耳元で囁いた。
 リリアナがパアッと顔を輝かせる。
「やった! 今度こそ食べまくるわっ!」

 そしてやってきたのが、海エリアだ。
 今度はきちんとハリスが【宝石貝の貝殻 宝石があれば尚よし】という依頼を引き受けてきてくれたのだ。
 二枚貝の魔物である宝石貝は、ただのグレーの貝殻だと思いきや、内側がキラキラ輝く虹色になっている。これが女性が身に着ける装飾品の素材として需要が高い。
 さらにレアドロップではあるが、貝の身の中に様々な宝石類が入っていたら大当たりだ。これが「宝石貝」の名前の由来になっている。

 白い砂浜に照りつけるお日様、打ち寄せる波。
「まずはバーベキューよ~~っ!」
 リリアナは拳を上げて叫んだ。

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