六月の花嫁

六月の花嫁

俺は、6年前、最愛の彼女を亡くした。
結婚式の予約もしていた。彼女は
6月の雨の日、交通事故で亡くなった。
酒気帯び運転の車に、はねられた。
俺は、何年も立ち直れなかった。

1年前、幼なじみのありさに街で偶然出会って
思い出話に花が咲いた。その後、何度か
会うようになり、俺は、今年の3月、ありさにプロポーズした。ありさは、俺のプロポーズを受け入れてくれた。今度の土曜日、2人で式を挙げる。なんだかんだで、予定がずれまくって、6月になった。

ホントは身内を呼んで式を挙げたいところ
だが、コロナ禍だし、二人で小さな式を
挙げることに決めた。お互い、仕事が忙しく、
土曜の夜しか予定が合わなかった。

ありさは、デザイナーだ。ウェディングドレスは、自分でデザインして作った。シンプルなデザインで大人っぽい。真っ白なサテンの生地のマーメイドタイプのドレスだ。髪型は、アップにして、大きな花をつけるらしい。ありさは、スラっと背が高いので似合いそうだ。

俺は、亡くなった彼女のことをふと、思い出した。名前は、真由。真由は、小柄の童顔で
可愛らしかった。ウェディングドレスを決めに行った時、うれしそうに、いろいろ試着して「これ、似合う❓」と笑顔で聞いてきたのを覚えている。レースフリフリの可愛いデザインのウェディングドレスを選び、「これにする!」ってうれしそうに笑ってた。その後、しばらくして亡くなった。なんで、今頃、真由のこと思い出したんだろう。

それから、数日経ち、土曜日を迎えた。
夜、21時。俺は、チャペルの中にいた。
ありさは、ドレスに着替えていて、もう少し
時間がかかるみたいだ。俺達の希望で、
2人っきりで、誓い合いたいと言った。
チャペルの中には、俺達以外、誰も入れないつもりだ。

急に電気が消え真っ暗になった。停電か。俺は、戸惑った。すると、キーっと後ろのドアが開いた。俺が振り向くと、そこには………。
6年前に亡くなったはずの真由が立っていた。

「どうして❓」俺は、恐怖で血の気がサーッと引き、体が完全に固まった。「ごめん、長いこと
待たせて」彼女は、どんどん俺のほうに近づいてくる。彼女が着たかったレースフリフリの純白のドレスを着ている。そして、近づく度に、純白の
ドレスが血で赤く染まっていく。額(ひたい)からも血が、流れている。彼女は、事故に遭った時、頭を強く打って亡くなった。

血だらけの真由が俺に近づいてくる。「このドレス似合うでしょ。こうじと一緒に選んだよね。」
彼女は、笑顔だ。俺は、「似合うよ。すごく
似合うよ。」と震えた声で答えた。真由は、「ずっと私のこと待っててくれてたんだよね❓やっと会えた。」と言った。もう少しで、俺のそばに近づきそうになった時、俺は、膝をついて、真由に謝った。

「ごめん、ごめんな。俺は、真由を愛していた。
だから、俺は、ずっと立ち直れなかったんだ。
でも、俺は、好きな人が出来た。勝手なのかもしれない。でも、俺が君を愛していたのは、ホントだから信じてほしい。真由、愛してたよ。ホントに愛してた。ごめんな、許してほしい。」俺は、泣いていた。すると、真由が、俺の頭を優しくポンポンと叩いて言った。「わかったよ。私のこと愛してくれてありがとう。こうじ、幸せになってね」そう言うと、彼女は、目の前から姿を消した。

すると、電気がパッとついて、目の前が急に明るくなった。後ろのドアが開き、ありさが駆け寄ってきた。「こうじ、どうしたの❓」膝をついて、泣いてる俺を見て、驚いている。俺は、「なんでもないよ」っと涙を拭き、彼女と永遠の愛を誓った。









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