"ぶっきらぼうで笑わない女神"の恋愛事情
「洸平さん、神戸の港で話をした時、私が洸平さんを導いたって言っていたのは、このことだったのですね。直接お礼を言いたかったって。あの時はなんのことだろうと思っていましたが、これで腑に落ちました。でも、謝る必要はありません。私は、洸平さんでよかったと思っています」

「真琴さん……」

「洸平さん、ひとつ質問していいですか?」

洸平はゆっくりと頷いた。

「顔出ししないのは、パニック障害の発作が理由ですか?」

「うん、それが一番の理由だった」

「だった?」

「もちろん、発作も大きな理由だけど、僕を主張したくないだけ」

「……」

「ファンはキャラクターに恋をしてるわけでしょ、その恋路を邪魔したくないんだ」

真琴は絶句した。こんなにもファンの気持ちを大切にしている声優がいるだろうか。だから告白する時も、がっかりさせてしまうと前置きしたのだ。

【顔出ししない】その真意を知り、真琴の目頭は熱を帯びる。瞬きと同時に温かいものが頬を伝った。洸平のことだ、正体を明かさないスタンスは、この先もきっと変えることはないのだろう。

「あっ!真琴さん、やっぱりショックだったよね。泣かせてしまっちゃった。ごめんね、どうしよう……」

洸平が目の前であたふた始めたその時、スッと伸びた指先が、真琴の涙を優しく拭った。

「恭平さん……」

彼もまた、洸平の気持ちを尊重し、見守ってきたのだろう。何故オセオンを知っているのかと問い詰めた時、ファンだと突拍子もないことを言い出したのは、洸平の想いを守ろうとしたからに違いない。
ふたりの優しい世界に自分の想いも守られていたのだなと悟った時、初めて人間の温もりというものの尊さを知った。
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