"ぶっきらぼうで笑わない女神"の恋愛事情
引っ越すことを決めてから、少しずつ片付けを始めた。休日ということもあり、恭平も手伝ってくれるというので、マンション近くにあるお気に入りの定食屋で昼食を済ませ、ふたりで真琴のマンションへと歩いて戻っていると、行く手を遮るように女性が目の前に飛び出してきた。
フリルワンピースを纏い、人形のような可愛らしい女性だった。

立ち止まると、恭平が真琴を隠すように自分の後ろにまわしやる。

「お前が何故ここにいる」

「お兄さまが心配でついてきたの」

「お前……」

恭平の嫌悪感が背中からも伝わってくる。

「俺の視界に入るなと言っただろ」

「どうして?お兄さまはずっとそんな意地悪言わなかったじゃない。その人に何か弱みを握られているの?」

「弱み?何を言っているんだ」

「パパも凄く怒ってて、お兄さまのところには行っちゃダメだって言うし、お兄さまもパパも、その人から嫌がらせを受けているんでしょ。雪乃が守ってあげるから、一緒に帰りましょう」

「お前の思考はどうなっているんだよ」

「だって、ママが言っていたもの。恭平さんはきっとその女に弱みを握られていて、雪乃を守るために仕方なく突き放しているだけだって」

恭平が大きく溜息を吐いた。

恭平の背後にいて、雪乃とやらの表情はよくわからないが、話の流れからすると、雪乃は完全に履き違えているようだ。恭平のことが好きすぎて、自分の都合のいいように解釈してしまっているのだろう。しかも、母親がそれに輪をかけている。相当癖のある人物だということが会わなくとも想像できる。真琴のマンションまで特定してしまっているし、とても厄介だ。

「ねぇ、あなた、お兄さまの後ろに隠れていないで出てきなさいよ。いつまでお兄さまを盾にするつもり?」

恭平の腕が真琴を守るように回される。
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