"ぶっきらぼうで笑わない女神"の恋愛事情
出かけた先は高級ジュエリーショップだというのに、ふたりしてラフな格好なのだが、恭平は全く浮いていない。寧ろ、全面から放たれるオーラで周囲を圧倒している。真琴は隠れるように恭平の後ろにまわった。

店員に勧められる指輪の数々は、目玉が飛び出るほどの金額であろうことは容易に想像がつく。
恭平を見やれば、涼しい顔で店員とあれでもないこれでもないとやり取りをしている。
真琴はその様子を引き攣った顔で見守っていた。

「真琴、俺はこれがいいんじゃないかと思うが、どうだ?」

恐る恐る恭平の背後から指輪に目をやると、プラチナリングの上品な曲線の中央に、5本爪の1カラット以上はあるであろうダイヤモンドが眩しいほどにキラキラと輝いていた。思わず溜息が漏れる。

「素敵……」

「嵌めてみろ」

高級な指輪に指を通すのは勿論、何よりも、コンプレックスである関節の太い指を晒すことに躊躇いを感じていた。

「どうした?」

「指が……私、凄く関節が太いから……」

「そうか?俺は全くそうは思わないが」

恭平の顔を見やると、優しく頷いてくれたので、恐る恐る差し出した。

「まぁ、透き通るような奇麗な指をしていらっしゃいます」

「ほら、なっ、真琴の思い込みだ」

そうなのかな?思い込みだったのかな?
恭平によって、真琴のコンプレックスさえも解消されていく。

真琴の指に嵌められた煌びやかな宝石は、周りにいた誰をも魅了していた。



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