"ぶっきらぼうで笑わない女神"の恋愛事情
昼休みの社内は、エレベーターだけでなく、通路もエントランスも社員の往来が激しい。けれど、彼が進む先だけは、波が引くように道が出来る。その道をスマートに歩いて行く彼の背中に隠れるように、真琴は恐縮しながらついて行った。
連れて来られたのは、会社からすぐ近い隠れ家のような麺処。狭い入口には看板もなく、暖簾もかかっていない。見た目は普通の民家だ。まさか、ここが店だとは誰も思わないだろう。
店内はほぼ個室になっている。彼の顔を確認した店員は、お待ちしておりましたと、名前も聞かずに奥の部屋へと案内した。テーブル席になっている。
「どうぞ」と彼が椅子を引き、座るように促す。真琴は「失礼します」と腰掛けた。
「会社から近いところに、こんなお店があるなんて知りませんでした」
「だろうな。なにせ、入口がああだ、店とは思わん」
「私も思いませんでした」
彼はしてやったりと、子供がイタズラを成功させた時のような表情を向けた。
「ここの蕎麦は絶品だぞ、君に食べてもらいたくてね。蕎麦アレルギーでなくてよかった」
二人の来店を待っていたかのように、陶器に盛りつけられた蕎麦が運ばれてきた。お膳の上には小鉢もある。
合掌し、いただきますと口に運んだ。程よいコシに、出汁のきいた繊細な味のつゆ。美味しくて、思わず笑みが漏れる。小鉢も、茶碗蒸しも完食してしまった。
連れて来られたのは、会社からすぐ近い隠れ家のような麺処。狭い入口には看板もなく、暖簾もかかっていない。見た目は普通の民家だ。まさか、ここが店だとは誰も思わないだろう。
店内はほぼ個室になっている。彼の顔を確認した店員は、お待ちしておりましたと、名前も聞かずに奥の部屋へと案内した。テーブル席になっている。
「どうぞ」と彼が椅子を引き、座るように促す。真琴は「失礼します」と腰掛けた。
「会社から近いところに、こんなお店があるなんて知りませんでした」
「だろうな。なにせ、入口がああだ、店とは思わん」
「私も思いませんでした」
彼はしてやったりと、子供がイタズラを成功させた時のような表情を向けた。
「ここの蕎麦は絶品だぞ、君に食べてもらいたくてね。蕎麦アレルギーでなくてよかった」
二人の来店を待っていたかのように、陶器に盛りつけられた蕎麦が運ばれてきた。お膳の上には小鉢もある。
合掌し、いただきますと口に運んだ。程よいコシに、出汁のきいた繊細な味のつゆ。美味しくて、思わず笑みが漏れる。小鉢も、茶碗蒸しも完食してしまった。