"ぶっきらぼうで笑わない女神"の恋愛事情
真琴の質問に淀みなく答える。他にもマニアな質問をしたのだが、全て正解だった。
どうやら、ファンだというのは冗談ではなさそうだ。

それにしても、恭平の横に腰掛けている洸平の様子がおかしい。どうしたのだろうか、ついさっきまでの柔らかい表情とは打って変わって顔に血色がない。発作を起こしていた時分を思い出す。

「洸平さん?大丈夫ですか?」

「……」

返事はないし、何か思い沈んでいるようだ。

「おい、洸平、どうした?」

「兄さん……」

「ん?」

「僕、苦しいよ」

「洸平……」

洸平は恭平の顔を見返すと、視線で何かを訴えているようだった。
恭平は思案する表情を浮かべたが、すぐに柔和な笑みで軽く頷いた。

「真琴さんをがっかりさせてしまうかもしれないけど、秘密にはしておけない」


いったい何事なのか。真琴自身ががっかりしてしまう秘密?全く見当もつかない。けれど洸平の表情は険しく、何か大きなものを抱え込んでいるのは確かだろう。洸平の思い悩む姿を前に、真琴の心がにわかにざわつき始めた。

「あのね、真琴さん、僕、僕は………」


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