「好き」って言ってよ!
「奈帆ちゃん、大丈夫?」

青葉の後ろ姿を見送ると、哲郎が声をかけてきた。

奈帆は何が起こったのか全く理解ができなかった。

(婚約破棄をしていないって、どう言うことなの…?

婚約関係は継続中って、何でなの…?)

ーー嘘じゃない、事実だ

先ほど言われた青葉の言葉が頭の中で鳴り響いている。

くらり…と、自分の躰が後ろへ傾いたのがわかった。

「奈帆ちゃん!?」

「店長!?」

哲郎と樹里の声が遠くに聞こえる。

(婚約破棄をしていないって、何で…?

これは私の悪い夢なの…?

私はまだ夢を見ている最中なの…?

それか、昨日の出来事は私の夢だったの…?)

「嘘だって言ってよー!」

そう叫び終えたその瞬間、意識が途切れた。
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