続・人形と話す子

続・人形と話す子

 


 目を覚ましたメアリーは、ベッドの下でぐったりしているドールを手にしました。

「ドール、おっきして。あそぼ」

 メアリーが声をかけても、ドールは長いまつげを閉じたままです。

「ママ! ドールがおっきしないの」

「あらあら、こんなに汚れて。ドールをきれいに洗ってあげましょうね。そしたら、おっきしますよ」

「うん!」


 ママは、ドールが着ていた汚れたドレスを洗剤に浸すと、ドールの髪も顔も体もぜんぶ洗ってあげました。

「メアリー! ほら、きれいになったでしょう?」

「うん! キレーになった」

「髪を乾かしてあげましょうね」

「うん」



 ママは、ドールのクルクルの金髪をドライヤーで乾かしました。

「何色のドレスを着せてあげるの?」

「んとね、……メアリーがきしぇてあげるの」

「はいはい」

 ママは、ドールをメアリーに手渡しました。




「ね、なにいろのドレスがいいの? ドール。あかいろ、きいろ、しろいいろ? ふふふ……」

 メアリーは自分の部屋に入ると、ドールにドレスを着せてあげました。

「みずいろのドレスだよ。ねっ、ドール、きいてる? みずいろのドレスだよ。おそとであそぼ。ふふふ……」



 メアリーは、朝食の仕度をしているママに聞きました。

「ママ、おにわであしょんでいい?」

「いいけど、静かにね。おばあちゃん、まだ寝てるから」

「はーい」



 ドールを抱っこしたメアリーは、庭の木に吊るしたブランコに乗って遊びました。

「ブリャンコ、ブリャンコ、ゆ~らゆ~ら。ふふふ……」

 メアリーの()いだブランコは、空に届くほどに大きく揺れていました。




「ママーーーッ!」

 メアリーの悲鳴に驚いて、キッチンの窓から覗いたママは、その光景を見て、更に驚きました。

 空の色に同化するように、水色のドレスを着たドールが、気絶しているメアリーを抱き抱えたままで空中に浮いていたのです。

(……う、浮かんでる)

 ママは目を丸くしながら、その一部始終を見ていました。

 メアリーを抱いたドールは、ゆっくりと庭に降り立つと、軽い足取りでメアリーの部屋に入って行きました。

(……に、人形が歩いたっ!)

 ママは信じられない表情で、何度もまばたきしました。

(……もしかして、昨日、メアリーをベッドに運んだのはドール? ……そんな……でも、玄関からメアリーの部屋までは、人形の足跡しかなかった)

 ドールは、メアリーが生まれるずーっと前からメアリーのおうちにいました。メアリーのおばあちゃんの、そのまたおばあちゃんのころから。

 だから、そんなおばあちゃんたちの魂がドールに成り代わって、いつもメアリーを見守っているのかも知れません。

 大切に扱われてきた人形は、傷一つなく、青い瞳はいまでもキラキラ輝いて、きれいです。



 目を覚ましたメアリーは、一緒のベッドにいるドールに話しかけます。

「ドール、おはよ。メアリーがママ。ドールがベビー。わかった? ね、ドール、わかった? ベビーだよ。ふふふ……」




 メアリーは、ドールに助けられたことを知りません。だから、ママもメアリーには内緒です。





 ドールの秘密は……
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