地味系男子が本気を出したら。


「桃は、大丈夫……?」

「私…?だから大丈夫だって……、」


その時。


――ピッシャーーーーン!!


外からものすごい轟音が轟いた。
さっきよりも大きい雷が落ちたんだ。

咄嗟に桃は、僕にもたれかかった。
濡れるとか、そんなこと言っている場合ではない。
桃は僕にしがみついたまま、小刻みに震えている。

……やっぱり、怖かったんじゃないか……。


「……もう大丈夫だよ」


ポンポンと優しく彼女の背中をさすり、ポケットからワイヤレスイヤホンを取り出して桃の耳にそっと付ける。

小学生の時、蒼永くんからもらったビンゴの景品だったものだ。
かなり高性能なイヤホンで今も大切に使わせてもらってる。

イヤホンから流れるのは、僕たちが好きなバンドの曲。
なるべく大音量で流した。


「これなら聞こえないでしょ?」


その僕の声も聞こえないかもしれないけど、何となく伝わったかな?

それから自分のジャージを桃に被せて、彼女の手を引いて雨空の下を駆け抜ける。
多少だけど、桃が濡れないように。

結局二人ともびしょ濡れになって、バスに乗る前にタオルを渡されたけど、あんまり意味なかった。


「…大志って、なんでいつも…」

「ん?」

「なんでもないわ!これありがとう!
それと、風邪引いたら承知しないからっ」


そう言って桃はイヤホンを押し付けた。
微かに耳が赤くなっていたのは、多分寒さのせいではないと思う。

やっぱり桃は、かわいいな。


だけど、結局二人とも風邪を引いて後日学校を休むことになるのだった。


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