【一気読み改訂版】とし子の悲劇

【第19話】

9月23日のことであった。

この日、あいつの家では新たなもめごとが発生した。

家の権利書が、義父母の知らないうちに紛失していたことが明らかになった…

義父母は『権利書がなかったら家で暮らして行くことができない助けてほしい…』とさわいだ。

あとになって、家の権利書を持ち出したのは親類縁者であることが判明した。

この時、義父母は親族が福山市の社会福祉協議会《しゃきょう》に申請していた老健施設《しせつ》に入所することが決定した。

あいつの家から家財道具が次々と運び出されたあと、トラックに積み込まれた。

その間に、義父母は施設の車両に無理やり押し込まれた。

『住み慣れた家で一生を終えたい』と泣き叫んでいた義父母を施設の職員たちがだまらせるために殴るけるの暴行を加えた。

施設の職員たちは、義父母を車に押しこめたあと猛スピードで車を走らせた。

9月24日の深夜2時のことであった。

またところ変わって、広島県庄原市の甲奴分《こうぬわか》れの国道の交差点にて…

(キキキキキ!!ドスーン!!)

あいつは、国道をひとりで横断していた時に走ってきたトレーラーにひかれて殺された。

あいつをひいたトレーラーは、岡山県方面に逃走した。

そして物語《ドラマ》は、最悪の結末を迎えた。

9月27日のことであった。

たくさんの荷物を詰めこんだボストンバッグと赤茶色のバッグを持っているアタシは、JR福山駅のコンコースにいた。

アタシは、これから山陽本線《さんようせん》の電車に乗って、三原市へ帰る予定である。

アタシは、山陽本線《さんようせん》の下りホームヘ向かうつもりでいたが、電車に乗る時間を変えることにした。

この日は、あいつの家が強制的に取り壊される日であった。

あいつの家の最期《さいご》をこの目で見届けよう…と決めた。

アタシは、JR福塩線《ふくえんせん》の列車に乗って神辺《かんなべ》へ向かった。

アタシが神辺《かんなべ》に着く一時間前であった。

(バリバリバリバリバリバリ!!ガシャーンガシャーンガシャーン!!ドスーン!!ドスーン!!)

あいつの実家だった2・5世帯住宅は、重機によって勢いよく壊れた。

アタシが現場に到着したのは解体開始から30分後であった。

アタシが現場に到着した時、あの2・5世帯住宅は半分が壊れた。

そして15分後…

家は、粉々《こっぱみじん》に壊れた。

アタシは、にらんだ目つきで家の跡地を見つめた。

章介《あのクソッタレ》は…

アタシをグーで思い切り殴った…

その結果、家庭内の人間関係が壊れた…

クソッタレの家の親類縁者たちは…

お嫁さんを粗末にしたから…

バチが当たったのよ…

アタシは、ガレキと化した家の跡地をみつめながらつぶやいた。
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