【一気読み改訂版】とし子の悲劇

【第49話】

その頃であった。

オレンジタウンにあるあいつの家の前で、黒のYシャツに白のスーツのやくざ4人が玄関の前で大声をあげてさけんでいた。

キンリンの住民は、ヒソヒソ声で話していた。

現場を目撃した武方《たけかた》さんは、急いでアタシいる県庁前のファミマへ向かった。

義弟《おとうと》は職場実習をさぼるようになったので、どうしようもないバカになった。

加えて、まんのう町で発生したカップル襲撃事件で香川県警《けんけい》からうたがいをかけられた。

武方《たけかた》さんは、オタオタした声であいつを助けてほしいと言うたが、アタシは拒否した。

アタシは、新しく来たお弁当を陳列ケースに並べながら武方《たけかた》さんに言うた。

「武方《たけかた》さん!!アタシはあいつの家とリエンしたのよ!!あいつの家のことを聞いただけでもヘドが出るのよ!!お願いだから帰ってよ!!」
「とし子さん…こっちは困っているのだよぉ…家にやくざが4人押し掛けて、大声でおらんでいるのだよぉ…しゅうさくさんがどこで何をしているのか分からない…その上に、けいさくさんも就職が決まらないので困っているのだよぉ…」

アタシは、武方《たけかた》さんに対して怒った口調で言うた。

「アタシは、あんたとあいつの家の親類縁者たちに対して強い怒りを抱いているのよ!!武方《たけかた》さんは、アタシがなんで怒っているのかわかってないわね!!」
「とし子さん…」
「7年前のことを忘れたとは言わさないわよ!!」
「7年前?」
「すっとぼけたことを言わないでよ!!7年前にあいつがオレンジタウンに家を建てたときよ!!あんたはその時、なんで汚い手を使ったのよ!?」
「えっ?汚い手?なんのこと?」
「アタシは、あんたが汚い手を使っていたことを怒っているのよ!!」
「とし子さん…」
「いいわけ言わないで、アタシの問いに答えなさいよ!!」

アタシは、ひと間隔あけてから武方《たけかた》さんに言うた。

「あんたのことについては、あいつの家の近所の奥さまがアタシに全部話したのよ!!」
「とし子さん…」
「あいつが家を建てるときに、アタシの両親と不動産屋さんとあんたがあいつと一緒に、建築する土地に来ていたことを近所の奥さまから聞いたのよ!!」
「えっ?」
「アタシの両親があいつの家の建築費を全額出したことを怒っているのよ!!あんたその時、間に立っていたよね!!」
「とし子さん…」
「アタシの両親があいつの家の建築費を全額出したことを怒っているのよ!!あんたも両親とダンナとグルになってアタシを押さえつけたから殺すわよ!!」
「ちょっと待ってくれよぉ…頭がこんがらかってよくわからないよ…」
「あんたね、答えないと本当に殺すわよ!!」

困り果てた武方《たけかた》さんは、アタシに返答した。

「とし子さん、とし子さんの両親はとし子さんのお見合いのことは出したれど、直ちに結婚すると言うことではなかったのだよ…」
「(怒りを込めて言う)ウソばっかり!!」
「とし子さん。」
「それじゃあ、覚え書きを書いた書面を出しなさいよ!!」
「覚え書きは持っているよぉ…」
「それじゃあ、内容を教えてよ!!」
「分かった…教えるよ…だけどその前に、ひとつだけお願いを聞いてくれるかなァ…」
「イヤ!!今すぐに話して!!」
「分かってるよぅ~だけど、ひとつだけお願いを聞いてくれたら…」
「あんたの願いは、あいつともう一度話し合えと言うのでしょ…イヤ!!拒否するわよ!!」
「どうして拒否するのかなぁ…しゅうさくさんは泣いているのだよ…」
「帰ってよ!!」
「えっ?」
「帰ってよといよんのが聞こえないの!!」
「とし子さん!!とし子さんの耳にしゅうさくさんの泣き声は聞こえないのかな!!」
「その通りよ!!甘ったれのあいつは、メソメソ三角お顔になるまで泣いて泣きまくる男だから女々しいわよ!!」
「とし子さん!!」
「あんたはアタシの両親とあいつとあいつの親類縁者たちとアタシの親類縁者たち全員とグルになって、アタシを押さえつけたからぶっ殺してやる!!」
「とし子さん!!そんなことよりも、しゅうさくさんと話し合えと言っているのだ!!とし子さんの両親は、とし子さんの花嫁姿を見ることだけが楽しみで生きてきたのだぞ!!」

武方《たけかた》さんの言葉にブチ切れたアタシは、ポケットからスマホを取り出して電話をかけようとした。

「どこへ電話するのだ!?」
「アタシの知り合いの家よ!!」
「知り合いだと!!」
「あんたが覚え書きの内容を言わないのであれば、サイアクのシナリオを使うわよ!!」
「サイアクのシナリオだと!!」
「近いうちにダンナとダンナの実家の両親とアタシの両親を相手取って、オレンジタウンの住民全員が家の撤去と慰謝料請求の民事訴訟が始まるわよ!!今月中かおそくとも来月中に裁判が始まるわよ!!今回の裁判は、あんたも被告人になる可能性が高いのよ!!…それと、人の職場に土足で上がり込んでバイトの手を止めたことも含めて許さないわよ!!」
「とし子さん!!そんなことよりもダンナともう一度話し合え!!」

武方《たけかた》さんが言うた言葉にブチ切れたアタシは、リダイヤルボタンを押した。

(プルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル…ガチャッ)

「もしもし…田嶋《くみちょう》さん、ごぶさたしてます…とし子よ…仏生山の武方《たけかた》のクソガキがアタシにつきまといをしていたわよ!!本人がここにいるから今すぐに武方《クソガキ》をチャカでぶち抜いてよ!!」

武方《たけかた》さんは『助けてくれぇ~』とさけびながら逃げていった。

フン、弱虫…

アタシは、冷めた目つきで逃げていった武方《たけかた》さんを見つめた。

ところ変わって、店の奥の部屋にて…

アタシは、ロッカーの戸を開けて鏡を見つめていた。

鏡には、真っ赤な染まった目にほがそ(グチャグチャ)の髪の毛のアタシの表情が写っていた。

アタシは、制服のジャケットと青色のブラウスを脱いで、ロッカーの戸に思い切り叩きつけた。

ブラウスの下は、ターコイズのブラジャーを着けていた。

アタシは、右手で思い切り髪の毛をかきむしった後、ターコイズのブラジャーを思い切りちぎってその場に座り込んだ。

その場にすわりこんだアタシは、声をあげて泣いた。
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