【一気読み改訂版】とし子の悲劇

【第90話】

その日の夜のことであった。

ダンナは会社で残業をしていたので、帰りは遅くなるようだ。

食卓には、ふじおさんとまさおさんとアタシの3人がいた。

テーブルの上には、白ごはんとみそしるときんぴらごぼうとひじきとコロッケとサラダが並んでいた。

ふじおさんは、ごはんを全く食べていなかった。

まさおさんは『ごちそうさま…』と言うて席を立ったあと、自分の部屋に戻った。

食卓にはアタシとふじおさんのふたりだけになった。

アタシは、ふじおさんがどのような不満を抱えているのかをたずねた。

「ふじおさん、どうしたのかな?…まだごはんを食べていないわね…」
「食べたくもねーんだよ!!」
「どうして食べないのよ?」
「働かざるもの食うべからずとオヤジが言うたから食べない!!」
「ふじおさん…」
「あんたも、オレが高校中退であることをとがめているのだろ!!」
「とがめていないわよ。」
「はぐいたらしいんだよ!!あんたもまさおとオレを比較したから一生うらむからな!!」
「比較してないわよ…高校に行ける方法は、他にもあるのよ…」
「そんなものあるわけねーよ!!夢みたいな話をするなよ!!」

席を立ち上がったふじおさんは、せっかく作ったごはんをゴミ箱に棄《す》てた後、家から出ようとした。

家から出ようとしたふじおさんを止めたアタシは、ものすごく困った声で言うた。

「ふじおさん。」
「市内《そと》へのみに行く!!」
「待ってよふじおさん…何に対して不満があるのか教えてよ!!」
「なんでそんなことを聞くんぞ!!」
「ふじおさんを助けたいからいよんよ!!」
「助けてくれと頼んだおぼえはねーよ!!」

(バターン!!)

思い切りブチ切れたふじおさんは、玄関のドアを思い切り叩きつけて閉めた。

その後、高知市内《ちゅうしんち》へのみに行った。

ところ変わって、高知市菜園場町《しないさえんばちょう》通りにある居酒屋にて…

ふじおさんは、メイテイ状態になるまで酒をのんでいた。

となりの席に、ヒサナガさんが座っていた。

この時、ふじおさんはヒサナガさんがのんでいるお酒に手ぇつけた。

「おいコラクソガキ!!」
「何やコラ!!これはオレの酒だゾ!!」
「何や!!文句あるのか!?」
「表へ出ろ!!」

このあと、ふじおさんとヒサナガさんが露地裏でドカバキの大ゲンカを起こした。

(ゴツーン!!)

ふじおさんは、10センチブロックでヒサナガさんの頭を思い切り殴り付けた。

「ああ!!痛い!!痛い!!」
「ふざけんなよ!!そんなに妻と赤ちゃんの元に行きたいのだったら、望み通りにしてやらぁ!!」

ふじおさんは、頭に大ケガを負って倒れたヒサナガさんを殺したあと、その場から逃走した。

ふじおさんは現場から逃走した後、行方不明になった。

おり悪く、事件現場の死角に竹宮《たけみや》が隠れていた。

竹宮《たけみや》は、事件現場の様子をデジカメで撮影《かくしどり》したあと、その場から立ち去った。

その頃であった。

家のダイニングテーブルに座っているアタシは、ダンナとふじおさんの帰りを待っていた。

ダンナは深夜0時に帰宅したが、ふじおさんは家には帰宅しなかった。

ふじおさんは、今どのあたりにいるのだろうか?

そう言えば、ふじおさんはスマホを持たずに家から出たみたい…

どうしよう…

どうすればいいのよ…

アタシの気持ちは、ひどくソワソワしていた。

その翌日以降、アタシが恐れていた事件が次々と発生したようだ。
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