【一気読み改訂版】とし子の悲劇

【第98話】

8月1日の昼前のことであった。

アタシに去られたあいつは、高知市南久万の公団住宅で暮らしているおいのけいぞうさん(28歳・市役所勤務)夫婦の家族に助けを求めた。

この時、けいぞうさんは家族の住まいを変えることを考えていた。

けいぞうさんは、家賃を節約するためにあいつの家に移り住むと言うた。

それを聞いたあいつは、安心した。

8月3日の昼前に、けいぞうさんと奥さま(24歳)と娘さん(2歳)があいつの家に引っ越して来た。

引っ越し業者のトラックが家の前に到着したあと、けいぞうさんの家の家財道具が家の中に次々と入った。

夕方4時過ぎに引っ越し作業が終わった。

その後、みんなで引っ越しそばを食べた。

けいぞうさんの奥さまは、ニコニコとした表情でまさおさんに『仲良く暮らして行こうね…』と呼びかけた。

あいつは、まさおさんの気持ちが和らいで心を開くことを望んでいたが、容易《ようい》ではなかった。

そんな中であった。

家の庭の茂みに竹宮《たけみや》が隠れていた。

茂みに隠れている竹宮《たけみや》は、大広間であいつとけいぞうさんの家族たちが楽しくお話をしているところを変な目つきで見ていた。

竹宮《たけみや》は、不気味な声で『好事魔が多しと言う言葉を忘れるなよ〜ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ…』と言うて嗤《わら》いながらちびたえんぴつでメモ書きをした。

竹宮《たけみや》は、けいぞうさん夫婦に弱みをメモ書きしたあとその場から立ち去った。

その一方であった。

高松へ逃げたアタシは、デリヘル店でデリヘル嬢として働いていたが、収入が十分でないからまた香川県庁前《けんちょうまえ》の通りにあるファミマで再びバイトを始めた。

今度こそ、女ひとりで生きると訣意《けつい》した…

今度こそは…

絶対に変更しない!!

8月8日のことであった。

あいつは、まさおさんの空いている時間を有効に活用するためにハローワークに行って、職場実習で就職する制度の申し込みをした。

まさおさんは、8月9日から高知市河ノ瀬町にあるリネン工場に職場実習に行くことが決まった。

あいつは、職場実習制度なら100パーセント就職できると思って決めた。

しかし、あいつが思っていた通りには行かなかった。

まさおさんは、最初の3日間はあいつやけいぞうさんの奥さまから『がんばってね。』と後押しを受けて職場に足を運んだ。

しかし、8月15日にまさおさんは午後2時頃に早退した。

翌8月16日は、無断で欠勤した。

この日、仲間たちと一緒に高知市内《しない》へ遊びに出掛けたあとそのまま行方不明になった。

その翌日の昼過ぎのことであった。

あいつの家に竹宮《たけみや》がやって来た。

竹宮《たけみや》は、けいぞうさんの奥さまに会いに来た。

この時、家にはけいぞうさんの奥さんと2歳の娘さんと竹宮《たけみや》がいた。

竹宮《たけみや》は、けいぞうさんの奥さまになれなれしく接近したあと、不気味な声でイカクした。

「おいコラ!!」
「やめて」
「なにがやめてぞコラ!!オドレよくもオレを裏切って、公務員《コネやろう》を選んだな!!」
「イヤ!!許して!!」
「ふざけるな!!おいコラ!!どうオトシマエつけるんぞ!?」
「イヤ!!許して!!」
「オドレのダンナが大学にいた時に、田嶋《くみちょう》の次男を鉄パイプで殴りつけて殺した!!…田嶋《くみちょう》は、次男くんを跡取りにすると決めていたのだぞ!!それをオドレのダンナがホゴにした!!」
「やめて!!昼寝をしている娘が起きるわよ!!」

けいぞうさんの奥さまは、泣きそうな声で竹宮《たけみや》に許しを求めた。

竹宮《たけみや》は、より気色悪い声でけいぞうさんの奥さまに言うた。

「あんたの娘は…まだ母乳《ちち》から離れてないのか?」
「まだ娘は…母乳《おちち》をのんでいるのよ…」
「ちょうどいいや~」
「やめて!!」

(ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリ!!ブチッ!!)

竹宮《たけみや》は、けいぞうさんの奥さまが着ていた白のブラウスを思い切り破いたあと下につけていたピンク色のフロントホックのブラジャーをちぎった。

その後、竹宮《たけみや》はけいぞうさんの奥さまのGカップの極爆乳《おおきすぎるおっぱい》をむさぼった。

「あっ…豊国《とよくに》さん…好きよ…」

この時、けいぞうさんの奥さまは竹宮《たけみや》に対して愛を求めた。

けいぞうさんの奥さまが竹宮《たけみや》に愛を求めていた様子を近くを通りかかった奥さまが目撃した。

奥さまは、足を止めてスマホを取り出したあと動画を隠し撮りした。

8月18日の夜9時過ぎであった。

武方《たけかた》さんがアタシがバイトしているファミマにやって来た。

この日の日中、武方《たけかた》さんの奥さまがあいつのもとへ行った。

この時、あいつはコブシをふりあげながら『あのヤクビョウ女をぶっ殺してやる!!』と口走ったようだ。

奥さまからことの次第を聞いた武方《たけかた》さんはアタシに対して『また離婚するのか…』とあつかましい声で言うた。

あつかましく言われたアタシは『そんなことは知らないわよ!!』と怒鳴りかえした。

アタシは、ゴミ箱の整理をしながら武方《たけかた》さんに言うた。

「武方《たけかた》さん!!アタシは女ひとりで生きると訣意《けつい》してあの家から出たのよ!!今ごろになってあいつとやり直せなんて、ふざけているわよ!!アタシはイヤよ!!ダンコ拒否するわよ!!」
「とし子さん、妻が心配しているのだよ…すみおさんの元に行って、もう一度話し合いをしたらどうかなぁ…」
「イヤ!!拒否するわよ!!夫婦関係は完全に破綻したからアカノタニンになったわよ!!」
「アカノタニン…すみおさんのことをアカノタニンと言うのかね?」
「その通りよ!!」
「とし子さん、天国にいるお父さんが泣いているよ。」
「はぐいたらしいわねダンソンジョヒ魔!!父は天国じゃなくて地獄へ墜ちたのよ!!やくざから金品を受け取るなど悪いことばかりしていたから拳銃《チャカ》で撃ち殺されたのよ!!」
「とし子さん、お父さんはとし子さんを守るために身代わりになったのだよ…」
「ますますはぐいたらしいわねダンソンジョヒ魔!!ミミズ!!イシゴカイ!!オキアミ!!ゲジゲジ!!あんたはアタシとあいつが離婚したら困る理由があると言いたいのかしら!!」
「困る理由はあるのだよぅ~」
「あんたね!!開き直った声で言わないでよ!!あんたもしかして、あいつの家の親類縁者におカネを貸したの?…それとも、家を建てるときに資金が不足していたから一部負担したの?…それとも、ダンナの家の親類縁者がヤクザに殺されそうになったから、組織の動きを封じるための策に出たの?…どっちよ!?」
「違うよ…とし子さんのお父さんの願いを叶えたい…」
「キーッ!!もう怒ったわよ!!きょうはブルーデーだからソートーいらついてるのよ!!アタシのバイトの手を止めたからもう許さないわよ!!店に居座り続けるのであれば、田嶋《くみちょう》さんに電話するわよ!!その後、竹宮《たけみや》の拳銃《チャカ》でドタマぶち抜くわよ!!」

思い切りブチ切れたアタシは、ゴミ箱の中にあったグリコドロリッチの容器を武方《たけかた》さんに思い切り投げつけたあと右足でけとばした。

その後、ゴミ箱の整理を再開した。

冗談じゃないわよ…

アタシは…

武方《たけかた》さんとおとーさんのあやつり人形じゃないわよ…

武方《たけかた》さんは、おとーさんとグルになってアタシをぺちゃんこにつぶしたから…

いつぞやぶっ殺してやる!!

アタシの怒りは、より一層高まった。
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