アンコール マリアージュ
その時だった。

「最後にもう1人、お礼を伝えさせて下さい。真菜さん」

新婦の声が響き、真菜は、え?と固まる。

スポットライトが真菜にも当たり、眩しさの中、真菜は床に片膝を付いた忍者のポーズで動けずにいた。

(忍者が、敵に見つかった…?みたいな)

妙な事を考えながら、自分に向けられた拍手に戸惑う。

「ほら、真菜さん!」

やがて、新婦が近付いて真菜の腕を掴んで立たせると、屏風の中央に連れて来た。

「真菜さん。本当にありがとう!そして本当にごめんなさい。私達が結婚出来たのは、真菜さんのおかげです。真菜さんの優しさ、強さ、愛情の深さ、人としての大きな心の広さ、真菜さんの全てに私は救われました。私達と出会ってくれてありがとう。私達を担当してくれてありがとう。私を許してくれてありがとう。私達の背中を押してくれて、今日も祝福してくれて、本当にありがとう!」
「新婦様…」

真菜の目から、滝の様に涙が流れ落ちる。

「真菜さん!」

やがて新婦と真菜は、互いに涙を流しながら抱き合った。

「し、新婦様ー。ああー」
「ありがとう、真菜さん。一生感謝します」
「そんなー、私こそー、ありがどうございまずー」

新郎も隣で声をかける。

「真菜さん、本当にありがとう。真菜さんの言葉があったから、俺は亜希ともう一度向き合う事が出来たんだ」
「ぞんなー、じんろうざままでー、あああー」

真菜の顔は、もはや涙でぐちゃぐちゃだった。

新婦は、手にしていたティッシュで、真菜の涙を拭いてくれる。

「あああー、ずみまぜんー、じんぶざまに、ぞんなー」

時折涙ぐみながら見守っていた列席者から、だんだん笑い声が上がる。

新婦も、ふふっと真菜に笑いかけた。

「真菜さんったら、もう、泣き過ぎ」
「じんぶざまだってー」
「いや、二人とも泣き過ぎ」

冷静な新郎の言葉に笑い出し、新婦と真菜はもう一度抱き合った。
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