アンコール マリアージュ
「何だろう、凄くドキドキする」
「そうだな。一体何が始まるのやら…」

披露宴会場の扉の前で、真菜と真は並んで合図を待つ。

ここからの流れを、二人はまるで知らない。
全てスタッフ達が進めてくれるとの事だった。

「それでは、新郎新婦のご入場です!」

中から久保の声が聞こえ、希と有紗が扉を開けてくれる。

「行ってらっしゃい!」

真菜は真と腕を組んで頷いた。

眩いライトの中、深くお辞儀をしてから歩き出すと、聞き覚えのある声で、真菜さーん!と呼ばれる。

「え?あっ、亜希さん!園田様も」
「うふふー、来ちゃいました。真菜さんのドレス姿、とーっても綺麗!」
「本当に。真菜さん、齊藤さん、ご結婚おめでとうございます!」

真菜は真と一緒に、ありがとうございますと頭を下げる。

続いて、サプライズウェディングの時の高木夫妻も、翼くんと一緒に手を振ってくれているのが見えた。

「サプライズ、今度はする側になりました!どうですか?びっくりしますよね?」
「ええ、本当に。もう顔が、どうしていいやら…」
「あはは、分かりますー」

由香里は頷いて笑っている。

そして、親族のテーブルが近付いてきた。

真の両親や昇社長も、にこにこと笑顔で迎えてくれる。

「真菜さん、とっても綺麗な花嫁様ね」
「ありがとうございます、お母様」

真菜の家族も、大きな拍手で盛り上げてくれる。

「姉ちゃん、すげーな、詐欺メイクだぞ、それ」
「ほんと!道端ですれ違っても、真菜だって気付かないわ」

真吾と母親の言葉に、真は思わずぶっと吹き出す。

「ちよっと、真さん!」
「いや、すまん。でも、あとでちょっとスマホの顔認証やってみてくれよ、真菜」
「えー?!それが花嫁に言うセリフ?」
「だって、気になるんだもん」
「まったくもう…」

すると、司会役の久保がマイクを持った。

「えー、新郎新婦のお二人。ラブラブな小競り合いはその辺にして、高砂席へどうぞ」

真菜と真は、ヒューヒューというヤジの中、顔を赤くして席に着く。
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