アンコール マリアージュ
「サイズも良さそうですね。苦しくないですか?」

真菜の見立て通り、9号でピッタリだった。

「軽く髪をアップにさせて頂いてもよろしいですか?」

問いかけに返事はないが、どうぞとばかりに待っている雰囲気があり、真菜は失礼致しますと言って、髪を上にねじりながらアップで留めた。

アクセサリーやベール、手袋なども、今日のところは取り敢えず真菜が選んで着けてもらう。

「いかがですか?とても良くお似合いですね」

鏡の中の新婦に笑顔を向ける。

美佳も、本当にお綺麗ですねと声をかけるが、やはり新婦は黙ったままだ。

「新郎様にも見て頂きましょうか?」

辛抱強く反応を待つと、ようやく小さく頷いてくれた。

「ではこちらを向いて、少々お待ち下さいね」

カーテンの前に立った新婦のベールを整えてから、真菜はそっとカーテンを出る。

「お待たせ致しました。新婦様、ドレスに着替えられましたよ」

おっ…と立ち上がる新郎に、よろしいですか?と笑って少しもったいぶってから、真菜は一気にカーテンを開けた。

一瞬息を呑んで目を見開いてから、新郎はため息の様に呟く。

「亜希、綺麗だな…」

うふふと真菜も嬉しくなって笑う。

「本当に、お美しいですよね。もう少しお近くへどうぞ」
「あ、は、はい」

新郎は新婦の前まで行き、マジマジと見つめる。

「すごく綺麗だよ、亜希。なんだか別人みたいだ」

うつむいていた新婦の顔が、その時ほんのり赤くなったのを真菜は見逃さなかった。
< 46 / 234 >

この作品をシェア

pagetop