アンコール マリアージュ
「おはようございます!」

オフィスにいたスタッフ全員が立ち上がり、真に挨拶する。

「おはようございます。今日は様子を見させてもらうだけなので、気にせず普段通りの仕事をして下さい」
「はい!」

そう言ってそれぞれ仕事に戻るが、皆どこかソワソワした様子だ。

それはそうだろう。
いきなり会社の役員が来て、普段通りの仕事をしろと言われても、やり辛いだけだ。

それが分かっていても、真は今日どうしてもフェリシア 横浜に来たかった。

目的は、真菜の様子を見るためだ。

2日前の夜、真菜宛にカミソリの刃が届いた事は、本人には話していない。

昨日、寮の管理人に防犯カメラの記録を見せてもらった。

あの日、真が帰宅する時間から遡って見てみると、夜の7時頃に、帽子を被り焦げ茶色のスプリングコートを着た人物が、辺りをうかがいながらポストに封筒を入れる様子が写っていた。

だが、エントランスの外の集合ポストは、防犯カメラでは遠目にしか捉えられておらず、顔はおろか、男なのか女なのかもよく分からない不鮮明なものだった。

真菜に話して、心当たりを聞いてみようかとも考えたが、カミソリの刃を送られてショックを受けない人などいない。

やはり本人には黙ったまま、しばらく様子を見てみようと考えたのだ。
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