アンコール マリアージュ
営業時間を過ぎ、書類の確認をしていた真菜は、デスクの上のスマートフォンにメッセージが届いた事に気付く。

あと20分程で着く、という真からのメッセージだった。

真菜はパソコンの電源を落とし、書類を片付けると、同じく残業していた久保に挨拶してロッカールームに向かう。

私服に着替えて表に出ると、やがて見覚えのある車が目の前に停まった。

「乗れ」

ドアを開けて、中からぶっきらぼうにひと言声をかけてくる真に、真菜は思わず吹き出す。

「お疲れ様です。失礼します」

そう言って、真菜が笑いを堪えながら乗り込むと、真は怪訝そうな顔を向ける。

「何がおかしい」
「いえ、そういう訳では。ちょっとおかしくて」
「お前のその言葉がおかしいぞ」
「そうですか?まあ、いいですけど」

変な生き物でも見る様な顔をしたあと、真は膝の上のパソコンをいじり始めた。

寮に着くと、真と真菜はそれぞれ自分の部屋で荷造りを始める。

といっても、既に真は、ほとんどの荷物を移し終えていた。

真菜は、ひとまず次の休みの日までの荷物を、大きなバッグに詰めていく。

(3日後にお休みがあるから、取り敢えずその日までの分。えっと、2泊3日の旅行の荷物って感じでいいか)

貴重品を持ち、ガスの元栓を閉める。

「よしっ!と」

戸締まりを確認した時、コンコンとノックの音がした。

「準備出来たか?行くぞ」

真の声に、はーいと返事をして、真菜は部屋から出た。
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