これが恋だなんて、知らなかったんだよ。




期待は外れていたけれど、悪い気はしなかった。


なんか……懐かしい。

勝吾くんとも最初の頃、お互いに毎日のように言い合っては《おやすみ》だけに対して返信しちゃって、キリがないような夜を過ごしていたなあ。



《おやすみなさい》



同じように返して、少し冷めてしまったホットタオルを目に被せた。



「ねえ桜乃、なんか変わったことでもあったでしょ」


「へっ、え、な、ないよ…?」



“でしょ”って断言してくるあたりが、ともちゃんなのだ。


それからの学校生活といえば。

とくに顔を合わせることはなく、ただメールが毎日のように来るぐらいで、《こまめに返すこと》とルールが追加されていたり…。


そんな日々を送っていた私に、ともちゃんは怪しげに見つめてくる。



「スマホ。ずーっと肌身離さず持ち歩いては何度もメールしてるっぽいし。…怪しいなあ?」


「そ、そんなことないよ…!」



潔白を表すためにサッとスマートフォンを机のうえに置いて、代わりにお弁当を手にした。



< 26 / 267 >

この作品をシェア

pagetop