乙女戦隊 月影 〜恥じらいの戦士〜
担架に乗せられて、運ばれる蒔絵と加奈子。

九鬼は何とか立ち上がり、頭を押さえていた。


「わたしは、月の戦士だ!正義の味方だ!」

半月ソルジャーの主張も、警官には通用しない。

2人の警官に両脇を決められて、連行されていく半月ソルジャーが、あたしと夏希の前を通る。

「お、お前達!わたしの無実を証明してくれ!」

半月ソルジャーの心からの叫びに、あたしと夏希は軽く目を逸らした。

「レッド!ブルー!」

半月ソルジャーは、あたし達の前で激しく抵抗する。

その様子に気付き、警官の1人がきいてきた。

「失礼ですが…お知り合いですか?」

その言葉に、思い切り嫌な顔をしたあたしを見て、警官は被っていた帽子を脱いだ。

「あたし達は、知りません」

あたしは気分を害したように、警官を軽く睨んだ。

絶対、世間的に知り合いだとは、思われたくない…その思いが、あたしの形相を恐ろしいものに変えていた。

警官は頭を下げ、あたしから離れた。

「レッド!」

半月ソルジャーの叫びに、あたしはまったく反応をしないようにした。

レッドって何だろう?知りません!あいつ、気持ち悪い。

首を傾げ、顔をしかめて…そんな感じを演じて見せた。

「レッド!」

空しい叫びが、廊下にこだました。

そして、あたしの前を、包丁が刺さったままの忠司が、お尻を突きだしたままの形で、担架で運ばれていった。


「怪人と変人を逮捕致しました!変人は、最近…この学園にでるという変質者だと思われます!」

警官が、無線で報告していた。


「レッド…」

階段を降りる為、廊下を曲がる瞬間、半月ソルジャーは悲痛な顔を、あたしに向けた。

だけど、あたしは半月ソルジャーの方を見ない。

階段を降り、姿が見えなくなると、あたしはやっと顔を向けた。

そして、一言…。



「あばよ!」


乙女戦隊 月影

第6話 あばよ

完。


屋上では、月影ロボが一台…沈みかけた太陽に照らされていた。
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