ジョーになりたかった男(懺悔)
デビュー
プロテストで1R開始早々左フックから右ストレートでKOしてしまい、その噂は他のジムへも流れ、なかなか試合を組むことができなかった。通例としてデビュー選手同士の試合を組むのだが、わざわざ強いと判っている選手相手にぶつけてくるジムもいない。

ジムとしては試合を組む為に苦肉の策を講じた。

デビュー戦は、北海道立総合体育センターにおいて、ジムの先輩日本ミドル級王者、和田政秋の2度目の防衛戦の前座に決まった。

そう...北海道のジムなら、プロテストで1RKOしたことなど知るまい...

しかし、

俺(大場直樹)は、高校3年。
そんなジム側の苦労も知らずに尊敬する先輩。和田の前座ということに対しては不服はないが、
北海道で試合と聞いた途端、マネジャー糸山に反発した。

冗談じゃないすっよぉ~学校休まなきゃいけないし....それに移動費なんてありませんよ~


ジムのマネージャーであり、選手のメンタルケアを担当する糸山(いとやま)はそんな直樹を
なだめるような口調で諌める。

直樹。移動費はもちろん宿泊費用全部ジムが持ってやるんだぞ。
学校?お前チャンピオンになるんじゃないのか?学校なんか卒業できればいいんだよ。

直樹は北海道で試合ということに不服なのだ。
だって....北海道じゃ...ダチや彼女も応援にこれないじゃん....
ぶつぶつ糸山に喰ってかかる。


お前~なぁデビュー戦で北海道に連れてってもらえるんだぞ。どれだけジムがお前に期待してるか判ってんのか?破格の待遇なんだぞ!


北海道?先輩王者の前座?破格の待遇?直樹にはそんなことどうでもよかった。

後楽園ホールで試合がしたい。


貧乏で....

いつも腹を空かせてた...
そんなとき友人が弁当を分けてくれたり

学費だって滞って学校へ通えなくなりそうなとき、友人みんがカンパしてくれ学費を払い
助けてくれた...

そんな....友人達にデビュー戦を見てもらいたい。
ただそれだけだった...
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