再会から始まる両片思い〜救命士の彼は彼女の心をつかまえたい〜
「由那ー。ただいま」

病院からほど近いところに新居を構えたとは聞いていてもお邪魔するのは初めて。
高層マンションの33階だなんて驚かすつもりで来たのに私はまた驚かされてしまう。

「はーい」

キッチンの方から声が聞こえてくる。パタパタと足音がしてきた。そして私の顔を見ると驚いて口がパクパクしていた。

「のどかちゃん?」

「由那ちゃん、元気? 原島先生に会って連れてきてもらっちゃった」

「ビックリしたー! 驚いたよ。生まれそう」

マタニティギャグに私も先生もドキッとした顔を浮かべてしまうが、由那ちゃんはニコニコしているのでホッと一安心した。

「入って〜」

由那ちゃんに声をかけられ私はリビングへお邪魔した。すると大きな犬がお出迎えしてくれ、またビックリ。

「うちのキキです」

尻尾を目一杯に振り回し、歓迎を表してくれる姿が愛らしい。私は頭と顎の下をこれでもかと撫でてあげた。

「この子がいなきゃ俺たち出会ってないんだ。キューピットなんだよな」

そう言うと原島先生もガシガシと撫で始めた。
そういえば前に由那ちゃんから出会いについて聞いていた。そっか、この子がキューピットなのね。なんだか心が温かくなるようなエピソードだ。そんな出会いが私にも……なんてまたつい考えてしまうが、今日は考えたくない。

「ねぇ、ご飯食べていけるでしょ?」

「え? 急だから今日は遠慮するよ。由那ちゃんとお腹の赤ちゃんに会いにきただけだし」

「何言ってるの。あんまり自慢できるものはないけどよかったら食べて行ってよ」

突然来てしまったし、顔だけ見たら帰るつもりだったのに……なんだか帰って迷惑をかけてしまったのかもと反省していると、隣で原島先生も「よかったら食べていって」と声をかけてくれ、私はお邪魔することになった。
由那ちゃんの作る料理は家庭的でどれも美味しかった。妊娠中で貧血気味だからとひじきのサラダが出てきた。ひじきと言えば煮物と思っていたが彼女のセンスにうなった。そしてこんな料理が食べられるのなら毎日喜んで帰ってくるんだろうな、と。胃袋をつかむってこういうことなんだなぁと私は女だが感心させられた。
久しぶりにお腹の中から笑い、楽しい時間を過ごすことができた。

「また来てね」

「うん。ごちそうさまでした」

私は帰りも原島先生の車で送ってもらい、なんだか温かい気持ちで満たされた。
結婚っていいなぁと改めて感じた。やっぱり自分もいつかふたりのように優しい思いやりのある生活を送りたいと強く思った。
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