ベッドの上であたためて
「柳瀬さん、若いのにお酒詳しいですよね」
「ここ、父の店なんです。だから宿題よりこっち優先で教え込まれてたくらい」

なるほど、と納得した。
と同時に、宿題というくだりに突っ込みたくなった。
一体いつから飲まされていたんだろう。

そういえば、ここに来ていて年配の男性は見たことがない。
いつもカウンターの奥にいるのは柳瀬さんと羽田さんだけだ。

「お父さんって、マスターってことですよね?私、柳瀬さんと飯島さんにしかお会いしたことないです」
「父はしばらく海外を旅してまわってるんです。俺は夏休みの間だけ父の代わりに出てるんですよ」
「夏休み…そっか、学生さんなんでしたよね」
「学生が酒に詳しすぎるのもいかがなものかと思いますよね」

彼はくすりと笑ったあと、カウンターに手をつき、軽く重心を預けて声を潜める。

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