ベッドの上であたためて
4.Be filled with…
9月に入っても、まだまだ真夏日は続く。
週に2,3回は行っていた『Ruka』には、羽田さんから話を聞いたあと一度も行かないまま10日ほど経った。
他の店を覗いてみるものの『Ruka』ほど居心地のいい場所を見つけることはできず、胸にぽっかり穴が空いた気分だ。

仕事がいつもよりも早めに終わった夜、美月さんに誘われて食事に出かけた。
店長である美月さんは、私よりずっと遅くまで店に残って仕事をしていることが多いから、こんなふうに一緒に外で食事をするのは久しぶりだ。

「最近元気がないのは例のバーテンさんのせい?」
「え?」

上品な所作でパスタをフォークに巻きつけながら、美月さんが問う。

「言いたくないなら聞かないけど、ちょっと心配だったの」

彼女は肩をすくめ、控えめに笑みを浮かべる。

元気がないなんて自覚は全くなかった。
だけど、美月さんはそれに気づいていて、今まで何も言わずにいてくれたんだろうか。
今日食事に誘ってくれたのも、この話をするためだったんだろう。
俯いた視線の先で、フォークに巻きつけていたパスタの先がはらりと崩れた。

『元気ですよ』なんて笑って返せない。
美月さんは鋭いからバレるだろうし、私はもしかしたら、このモヤモヤした思いを吐き出したかったのかもしれない。

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