人間オークション       ~100億の絆~
「おい、戻ったぞ。」

私が如月さんの部屋に戻ってきて少し時間が経つと如月さんも戻ってきた。でも、絶対に口きいてなんかあげないんだから。

「おい、主人の僕が戻ったんだぞ。何か言ったらどうだ。」

紙に文字を書き、顔を背けて如月さんに見せる。もちろん、書いた文字は『いや!』の3文字だけ。

「嫌…だと?敬語は使わない、口も利かない。やっぱりお前には本格的なお仕置きが必要なようだな。」

『そんなおどしには負けない。きらい。』

「ほう……。そんなにお仕置きされたいのか。何をしようか、鞭でも打つか、それとも尻でも叩くか。暴力はあまり好きじゃないんだがな……」

低い声で話し出す如月さん。私の心に不安を煽ってくる。でも別にお仕置きなんか、へっちゃらなんだから。




「そうか……決めたぞ。お前へのお仕置きは、お前が謝るまで僕からは一切口をきかないことにする。もし、僕に許しを請うなら『ごめんなさい、ご主人様』とでも言ってキスをするんだな。」


その言葉を放つと如月さんは部屋を出て行ってしまった。







え、今何が起こったの…?



頭の中を整理しよう。私が謝らないから如月さんが怒った。それで、お仕置きするって言われて、お仕置きの内容は如月さんからは一切口をきかないこと。私が謝るまでは如月さんとは何もなくなる。




「これって……最高のご褒美…?」






この時、私はそんな単純なことしか考えていなかった。私はすぐに気づくことになる。如月さんの考えたお仕置きに隠されていた本当の意味を。
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