人間オークション       ~100億の絆~
「さて、まずは使用人としての審査から。今から料理と掃除をしてもらいます。」


してもらいますって言われても檻の鍵が開くわけじゃない。床から机があがってきてその机には調理器具と掃除用具と思われるものが乗っているだけ。



「では、皆さん始めてください。まあ、使い方が分かれば…ですけどね。」



家が無かった私にはこんなものの真面な使い方なんて分からない。だけど……何もしないでひどい扱いを受けるくらいなら笑われても一生懸命やってみせる。命(いのち)ある限り。





「おやおや~、今年は使いこなせる人が多いですねえ。その中、3番さんと6番さんだけおかしな使い方をしていますね。お二人とも招待枠のようですが、これはひどい!」






楽しそうに人を馬鹿にするような笑い方をする司会者。3番と6番の招待枠。つまり、里香さんと私が酷いということ。こんな器具なんて名前しか知らないって言うのに……それだけで馬鹿にされるなんて……






「おーっと、ここで1番に150万との値段が付きました!」



1番と呼ばれる人の方を見るとトラックの荷台で淡々と喋っていた男の子が黙々と料理をしていた。



「続いて7番に200万、またまた1番にご指名が、480万です!」




こうやってオークションをされるっていうわけね……今は使用人としてのオークション。ここで落札されれば使用人として扱ってもらえる。だけど……奴隷よりは楽だからなんていって、こんな汚い人間たちに買われるなんてまっぴらよ。





「6番に100億。」



6番に……100億……?




「100億、100億がでました!器具すらまともに使えないような生贄にそのような値段をつけたのは……」

「おい、誰に向かって口を利いている。僕は、如月家のものだ。」



「なんだって!?如月家ともあろう貴族がこのような場所にいるだと……!?」
「如月家って国内で5本の指に入ると言われている大富豪だぞ……。」





今の男の人の声で明らかに会場の空気が変わった。いくら有名な大富豪だからってこんなくだらない、汚れたオークションに参加しているだけでも疑わしいのに、私に100億だなんて……。




「おい、6番、名前はなんていう。おい司会者、6番の檻の鍵を。」





ステージへと上がってくる男の人はとても100億だなんて言葉を発するようには見えない若い男の人。もしかしなくても、私とそんなに年も変わらないんじゃ……





「お前には名前はないのか、6番。」
「私は……命(みこと)。長月命。」

「命(みこと)…か。僕は如月且功(きさらぎかついさ)。皆が騒いでいる通り、如月家の子息だ。お前が分かる言葉で言うと、金持ちだ。」

「なんで私なの……?」

「玩具にぴったりだからだ。行くぞ。」




聞きたいことが山ほどある。言いたいことも山ほどある。でも、そんなのを言わせないような圧倒的な存在感。この男、何者なの……?





「命(みこと)…。」
「里香さん……。」



「落札されてよかったね……。さようなら、命(みこと)。」
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