敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~

 それから叶多くんが話を聞かせてもらった感謝を伝え、ふたりが握手をして動画は終わりになる。

 父たちを和解させるために用意された動画とはいえ、他にも確実に見てもらいたい人がひとりいる。

「ねえ、叶多くんこの動画……」
「家政婦さんに見せたいって言うんだろ? せっかくだから話し合いの場に同席してもらえばいい。となると当日は、美来の家に集まるのがいいか」
「そうね、そうしましょう」

 私の思いを察して、叶多くんが次々と具体的な計画を立て始める。

 上手くいく保障はどこにもないけれど、きっと大丈夫。叶多くんがそばにいる安心感から、素直にそう思えた。

「俺は弟も連れて行くよ。もう一度あのホテル計画を八束グループと一緒にやりたいと息巻いているんだ」
「私もぜひ会いたいと思ってたの。まだお礼も伝えられてなかったし」

 マンションの手配もクローゼットに詰め込まれた服も弟さんが用意してくれたというのに、挨拶さえできていないことがずっと気になっていたのだ。

「とりあえず、よかったよ。この件が片付けば、ようやく美来と俺たちの大切な子を愛すことだけに集中できるからな」

 頬を軽く撫でられ、甘い目で見つめられる。それだけでドキドキと胸が高鳴って、顔中に熱が集まった。

 ずっと離れていたから、こんな風に手を伸ばせば触れる距離にいてくれることが夢みたいだ。

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