フユノサクラー真冬の夜、恋の桜が舞ったー
=フユノサクラ③=



しばしの沈黙の後、りゅーじんの口からは、白い息をと共に、どこか投げたり気味な”告白”が飛び出す…


「…今日クズコが言ってたさ、最初からあきらめてるっての…、オレ、モロだわ。自分の家庭とか家族とか…、所詮、和気あいあいの団らんなんて叶わないって…。心の中で決めつけてたみたいだ。さっき、みんなと話しててふと気づいたよ。はは…、」


「ううん…、そんなことないって。だってあなた、真剣に今のお母さんとうまくやろうって…、それで、お母さんの行為で悩んで…」


「違うんだ!それは、表面っ面で自己満足したいって底の浅い願いだったんだ…。本心は疲れてたんだよ。もうこれ以上はゴメンだ…、3番目の母親で最後にしたいって…。壊れるのが、恐いだけなんだ、発信できてねーんだよ、一番身近な家族にさえ…」


りゅーじんはその場に立ち止まって、まるで何かを吐き出すかのように、マッキに心の底をぶつけた


「りゅーじん…」


マッキには、なぜだかカレの気持ちがすんなり胸に届いた


***


二人は、公園と桜並木の街路樹に挟まれた遊歩道の真ん中で正面を向きあっていた


”私…、カレの力になりたい…。この人の、素敵な笑顔がいっぱい見たいよ…!”


マッキは心の中でそう絶叫すると、心持ち肩を落とし、ひょこんと俯いてしまった


すると両の目から降りだした雨粒が、二筋その頬を伝わった


りゅーじんはそんなマッキの頭上に傘を固定し、じっと彼女を見下ろしている


そして、ゆっくりとした口調で再び言葉を発した


***


「でも、心に決めたよ。今日、お前や仲間たちと接して、やっと…。母…、それとオヤジへもしっかり正面から発信する…。それで、返ってくるものをまた受け止める。逃げずにな」


「りゅーじん…、ありがとう…」


マッキが顔を上げると、りゅーじんは笑っていた


その素敵な”笑顔”は気が付くと彼女に近づいてくる


そして…、カレの首がクイッと下方へ曲がると、そのままマッキのおでこに唇が触れた


マッキはこの数秒間、目をつぶっていた


その間、西風にそよがれている大粒の粉雪は、まるで夜桜の花びらが二人に遠慮するかのように舞っていた


その夜…、折原末樹は生まれて初めて、真冬に春を迎えた…




ーFINー





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