戻ってきたんだ…(短編)
だからこそ、幸せになってほしい。
心からそう思ってる。
…でも
本当は僕が幸せにしてやりたかった。
君の隣で、ずっと、一緒に笑っていたかった。
他の奴になんて渡したくない。
消えたくない。
離れたくない。
「っ………」
「翔……?」
紗梨奈は僕の異変に気が付いたのか、不思議そうに声をあげた。
今、僕はとてつもなく情けない顔をしているに違いない。
そんな顔、見せたくなくて、
抱き締める力を緩めずに彼女の首元に顔を埋めた。
そっと背中をさする手が、とても暖かい。
時々、その暖かさが遠くなる。
それはすなわち、感覚を失っているということで、
きっと、紗梨奈も気付いているだろう。
僕が、消えかかっていることに。