戻ってきたんだ…(短編)
「僕、今どうなってる?」
頭では分かっているはずなのに、性懲りもなくまだ認めたくなくて
そんなことを問う自分がいる。
生前、僕はこんなに往生際が悪かっただろうか?
どちらかといえば、何でも適当にやり過ごすタイプで、
流れに身を任せている方だと思っていたけど、
とんだ勘違いだったみたいだ。
「翔を通して、向こう側が見える」
紗梨奈は悪戯っぽく笑って、冗談めいた口調で話してはいるが、
少しだけ、身体が震えているようだった。
だんだん、彼女の存在が遠くなっていくような感覚。
『時間切れ』
ただ、その一言が頭に浮かんだ。
もう、二度と会うことはないだろう。
そう思うと、なんだかいろいろと伝えなきゃならない気がして、
勝手に口が言葉を紡いでいく。