Will you marry me?  〜エリート建築士は策士な旦那様でした〜

確か年齢は三十一歳だったと記憶している。
ビシっとしたひと目で高級だとわかるスリーピース。しかし、一般の会社員とはどこか違う、センスを感じる着こなし。

髪型も今どきの緩やかなカーブを描いたダークブラウンだ。キリっとした二重の瞳は何を考えているかは読み取れない。それが昨日、私が初めて彼の写真を見た印象だ。

父は官僚、母は元華族の出身、兄は父の秘書官で、妹は日舞の師範。
出生だけでもすごいのに、本人も日本で有名大学を卒業した後、一級建築士資格を取得、そして海外に渡りたくさんのデザインをして、数々の賞を受賞しているそうだ。

和建築にも定評があり、このたび東京の新しくできる近代美術館の建築の指揮を取っているとニュースでも取り上げられていたことは記憶にあった。
しかし、名前だけでこんな若い男性だと想像もしていなかった。

過去と未来、そして良き日本をうまく引き出すデザインは美しさの中に儚さ強さを感じる。
そのページにはそう書かれていて、数々の彼のデザインした建築物が載っていた。
その中には私が好きなものもあり、それが彼の建築だったことに驚いた。
< 3 / 83 >

この作品をシェア

pagetop