神様、僕に妹を下さい

Act.102 サイド晶(あきら)

「母さんから髪をまとめろって言われたけど、どうする?」

 か・・髪?
 てっきり、お母さんから痣の事を聞いてきて顔を見に来たのかと思った

 「あ・・うん」
 髪型なんて全然考えていなかったので、答えに困って曖昧に返事をした
 
 お母さん・・皇兄にそんな事を頼んだんだ

 皇兄の長い腕が私の横から伸びて、鏡台のブラシを取った

 「晶、顔少し上げて」

 「あ・はい」
 
 言われるまま顔を少し上げると、皇兄は毛先から少しずつブラシで梳し、それは頭全体に広がった

 皇兄に髪を梳かされるのは大好き
 一定のリズムがとても心地よくて、ふんわりとした気分になる

 「どうしたい?」

 あ・・とそうか。さっきも髪型をどうしたいか聞かれていたんだっけ

 「えっと、前髪は残してほしいの。後はお任せします」

 私の答えに、皇兄は少しだけ考えこんだ様子だったけど、すぐに真ん中で髪を2つに分け髪を編みこんでいった

 額の右側の痣を隠すためには、今日は前髪を上げる訳にはいかない

 あぁ。皇兄の指先ってなんて気持ちいいんだろう
 昔、皇兄によくこうして髪を編んでもらったっけ。私が不器用だから、見兼ねてやってくれたんだろうけれど

 「なぁ、いつから髪を伸ばし始めたんだっけ?」
 皇兄が突然話かけてきた

 「えっと、小学4年くらいだったと思うけど・・時々毛先だけ揃えているから、今はこの長さが定着してるの」

 わざと思い出したかのように言ってみたけど、本当ははっきり覚えている

 髪を伸ばし始めたきっかけ

 当時クラスの女の子に、『風になびく髪っていいな』って皇兄が言っているのを偶然聞いてしまってから、髪を伸ばそうと思った

 鏡越しに皇兄の顔を見る
 皇兄はそんな事、知らないんだろうなぁ

 皇兄と目が合い、自分が顔を上げていた事に気付いた

 「あっ」
 瞬きを数回し、口を噤んだ
 皇兄に痣、見られた・・?

 「お前・・化粧してる?」
 少し、驚いた様に皇兄は言った

 あぁ、そうだよね。私今までお化粧なんてしたことなかったから

 「へ・・変かな?」
 
 皇兄、なんて思ったの?

 「母さんから聞いた。狩野と出かけるんだって?気合入ってるじゃん」

 私の髪をまとめながら、皇兄は淡々と答えた
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