神様、僕に妹を下さい

Act.117 サイド晶(あきら)

 先輩と別れてバスに乗り込む

 振動に心地よさを覚えながら、うとうとと眠りはじめ、ゴツンと窓ガラスに額をぶつけては目を覚ます

 「もう少しで、停留所だなぁ」
 独り言を呟いて、窓の外を眺めると丁度公園の前を過ぎる所だった
 
 「ん・・??」
 何となく見た砂場の方の反対側の道に男の人が2人並んで歩く姿があった

 「皇・・兄?・・そんなわけないか」
 街灯のシルエットだけだけど、皇兄の姿によく似ている

 皇兄との夕飯の事ばかり考えているから、そう見えてしまったのだろう

 停留所に着いて、バスから降りると、駆け足で家に帰る

 「ただいまー!んー良い匂いする」
 キッチンからホワイトソースの良い匂いが玄関まで立ち込めている
 その香りを一杯に吸い込んで、パタパタとキッチンに向かった

 「皇兄!」
 キョロ、キョロとキッチンを見渡すが、皇兄の姿はない
 レンジに足を運ぶと、鍋にはポテトグラタンが作ってあった
 
 私の好物作ってくれたんだ

 人指し指でグラタンを掬って、口に入れる
 
 「美味しい。それに、あったかい」
 火を止めてまだ、そこまで時間が経っていない様子

 「皇兄ぃ、何処にいるのー?」
 
 ぽーん、ぽーん、ぽーんと時計が7回鳴った
 
 約束の19時。でも、皇兄の姿はない
 おかしいなぁ。皇兄は私と違って時間に正確な人なのに

 テーブルの横を通ると、ヒラヒラと1枚の紙が床に落ちる。拾い上げると皇兄の整った字で、『急用が出来て出かける事になった』と書いてあった

 「あっ・・」
 やっぱり、あの公園にいたの皇兄かもしれない
 
 用って長くかかるのかな?
 椅子に腰掛け、足をぶらぶらさせる

 「よし、公園に行ってみよう」
 家でじっとしているのも何だし、公園に行って皇兄かどうか確認して一緒に帰ってこれたらラッキー、用が長引きそうならそれまで

 公園までは少し距離があるけど、今日は堅苦しい事ばかりしたから、散歩は良い気分になった

 公園の入口の門をくぐって、砂場の方へ行くと、皇兄の後ろ姿が見えた
 一緒にいた男の人の姿はない。どうやら1人みたい

 「こう・・んぐっ」
 突然、背後から大きな手が伸び、私の口が塞がれる
  
 「んー!!」
 声を出すことも出来ず身体を抱えられ、植林の中に連れ込まれた
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