神様、僕に妹を下さい

Act.166 サイド皇紀(こうき)

「悪いが、一緒に行く事は出来ない」
咄嗟に否定の言葉が出た

 今さっきまで、桜場が来るまでは、行こうとしていたのに

 「どう言う事だよ!!」

 オレの発言に、桜場が声をあげた
 周りの会話が止まり、視線が桜場とオレに向けられる

 「あいつには、髪色の件で容姿維持申請届を提出しておく様言ってあったはずだ。それをしていないあいつが悪い」
 あくまでも、冷静に、事務的な言葉で返すと、「はい。次」と検査の仕事に移る

 晶の様に、生まれつき髪色が校則違反だと判断されるものに対して、申請書を出して認められれば、校則に引っかからないで済むはずなのだが・・

 オレもうかつだった。晶が提出したかどうか確かめておくべきだったな

 「確かに、それをしてないあいつが悪い、でも・・・先輩なら、証明できるだろっ」

 「副会長の立場で、一人の生徒だけを庇う訳にはいかない」

 「なっ・・」
 オレの発言に、桜場の言葉がつまり、見る間に目の中に血管が浮き出てきていた

 「先輩が言ってくれれば、あいつの疑いが晴れるんだ!」
 バンッと振り上げられた拳が、テーブルに叩きつけられ、ボールペンがクルクルと宙に舞った

 「すぐに感情的になるのは、良くないぞ。桜場」
 テーブルの下に落ちたボールペンを拾い上げると、オレ達を見て固まっている晶が、視界に入ってきた

 父親の先々代の祖先の血を、引き継いだ晶の髪は、全体の8割が落ち着いた栗色、残り2割はベージュ色の髪が部分部分に入り混じっており、ベージュの部分が光の加減によって、金色に輝く

 今日は、一弾とに輝いてるな

 少し泣きはらした跡の瞳と『皇兄』とかすかに呟いた唇

 「あいつ、嘘つき呼ばわりされてるんだ。このままだと染めなくてもいい髪を黒くさせられる。先輩は平気なのかよ。だってあいつは先輩のー」

 「だめ~!!桜場!」

 オレの妹だと叫ぶ寸前、晶の手が桜場の口を塞ぎ、桜場の身体が晶に引き寄せられた

 「やめて、もういいから」
 晶は納得のいかない桜場に笑いかける

 「いいって、どこがだよ」

 「私が髪を黒く染めればいい事だから。すみません。お騒がせしました」

 晶は軽く会釈をすると、まだ言い足りない桜場の腕をつかみ、来た方向に戻っていった

 「お姫様の方が、誰より大人だったな」

 「・・・」
 五十嵐の言葉が、胸に突き刺さる
< 166 / 350 >

この作品をシェア

pagetop