神様、僕に妹を下さい

Act.197 サイド皇紀(こうき)

 「先輩!身体大丈夫ですか?」

 生徒会室に入ると、沢村双葉が椅子から立ち上がった

 「ここには、来なくてもいいって言ったろ」

 オレがこんな状態で、予算の件があまり進まないのに対し、彼女が手伝いに来てくれているのは助かるが・・


 「先輩、向こうの部屋は今、オニイチャンが使ってて」

 いつもの様に会長室に向かおうとするオレの前を彼女が立ち塞がった

 「会長室なんだから、会長がいて当然だろ?」

 あの部屋には、予算のデータが入ったパソコンも置いてある。あれがないと仕事が進まない。当然彼女も判っている筈だが・・?

 「会長の他に誰かいるのか・・?」

 オレの質問にコクンと彼女はうなづいた

 「オニイチャンずっと、落ち込んでて・・でも、ようやく元気を取り戻したと言うか・・」
 言葉を濁して、誰がいるのか言おうとしないが、察しはついた

 「『もも』が来ているのか。それなら仕方ないな」

 会長は『もも』と呼んでいる女に恋をしている。『もも』とは仮の名で本名は別にあるらしいのだが、会長すら知らない始末

 『こーちゃん!『もも』に何言うたんや!!』

 3日前、会長はオレに怒鳴り込んできたな

 『もも』という女が、オレの事が好きで、告白してくるはずだから酷い振り方をするなと会長からお願いされていた

 会長との約束の場所に『もも』が来なかったのが、オレが彼女を傷つけたせいだと思ったらしい

 実際、『もも』らしき女は、オレの元には来なかったのだが・・

 「うまく行きそうなのか?」
 
 「さぁ、お膳立てまでしてあげたんですから、後はオニイチャン次第です」

 「・・うまく行くといいな」

 立っているのが辛くなり、ドカッと椅子に腰掛けた

 「優しいですね。先輩」

 いや、会長がうまく行けば『もも』に夢中になって、オレに変な事を言って来なくなるだろと言う事が前提なのだが・・


 「この部屋、味噌の匂いがしないか?」
 気のせいだと思っていたが、匂いがだんだん強くなっている

 少し、気持ち悪くなってきた。空気を入れ替える為に窓を開ける

 「そうだ!おにぎりあるんです。今持ってきますね」
 彼女は思い出したように言うと、会長室へ駆けていく

 「あ・・いや」
 今でも、吐きそうなのにおにぎりなど食べれるはずがない
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