神様、僕に妹を下さい

Act.291 サイド晶(あきら)

 「雨・・止んだな」

 皇兄の声が静かに響く

 耳をすませば、雨音がなくなっていて、お月様の光が、小屋の中に差し込んでいた

 『雨が止んだら・・帰るぞ』

 皇兄と抱き合っていられるのは、雨が止むまで。そう、約束していた
 約束通り、雨は止んだ。私は、皇兄と離れなければならない

 そして、明日からはいつも通り、兄と妹で・・

 「さて、そろそろ帰る準備をするか」

 皇兄の言葉に、私は顔を起し、白衣で胸を隠しながら皇兄と向き合った

 「まだ、泣いてるのか?」
 目元に皇兄の親指が伸びてきて、私の涙を拭った

 その後、私の左頬をつまむと、ピッと横に引っ張った

 「ふにぃ」

 「ふふっ。泣いてるより、こっちの方が似合うな」
 皇兄は、目を細めて笑う

 「お前は、笑ってるほうがいい。ほら、笑えよ」

 笑う・・笑える・・?
 皇兄が私の笑顔を望んでいる・・・
 皇兄の笑顔に答えてあげたい・・けど・・

 「・・ん出来るって思ったのに・・」
 さっきまでは、我慢出来るって思ってた

 私は深く息を吐いた

 「あき・・ら?」
 皇兄が心配そうに私の瞳を仰ぐ

 「ケホッ。皇兄・・ケホッ。皇兄・・もう少し私の話の続き聞いてくれる?」

 「でも、お前咳が・・声もかれて来ている。話なら家ででも出来るだろ」

 「今・・したいの。聞いて」
 止める皇兄を制して、私は話し出す

 「白馬の王子様もそうなんだけど、私にはもうひとつ夢を見ていた事があったの。自分の初キスは、絶対好きな人としたいって」

 皇兄のキスシーンを見たとき、好きだという感情より先に、ファーストキスの相手は皇兄でありたいと思った

 私は、この時から、この人を好きになる階段を上り始めていたんだね

 「皇兄の初キスは、好きな人とだった?」

 「オレは・・想う相手ではなかったが、お前はちゃんと夢が叶ってよかったじゃないか」

 そう言って、皇兄は私から顔を逸らした

 「会長・・と両想いでよかったな」

 一瞬・私とキスした事を皇兄が思い出してくれたのかと思った
 
 でも、違った
 皇兄は私の初キスの相手は、会長さんだと思っている

 「皇兄・・私・・着替えたいから、目閉じててくれない」

 「あぁ」

 皇兄が目を閉じたのを見て、私はゆっくりと皇兄から離れた
< 291 / 350 >

この作品をシェア

pagetop