神様、僕に妹を下さい

Act.294 サイド皇紀(こうき)

 オレの初キス

 出来ることなら晶、お前としたかった

 「オレは・・想う相手ではなかったが、お前はちゃんと夢が叶ってよかったじゃないか」

 晶が他の男とキスした現実が突きつけられ、晶から目線を外した

 他の男・・沢村会長と・・

 「会長・・と両想いでよかったな」
 
 片思いで、一方的にキスしたって、あとで自分が虚しくなる
 だから晶には、両想いの幸せなキスが出来てよかったと・・

 「皇兄・・私・・着替えたいから、目閉じててくれない」

 晶がオレからゆっくり離れた

 やっと、着替えて帰る準備をしてくれる
 オレはホッと、息をつき、目を閉じた

 丁度よかった。これ以上晶を見ていたくない

 
 「ケホッ、ケホッ」
 視力がない分、聴覚が鋭くなる

 「大丈夫か?早くしろよ」

 さっきから、晶の咳の間隔が短くなってきている
 いそいで、家に連れ帰らないと

 シュル、シュル
 晶が白衣に腕を通す音がする
 
 「皇兄・・ケホッ、皇兄さっき、夢が叶ってよかったと言ってくれたよね?好きな人と初キス出来たって」

 晶は咳き込みながら、さっきの話の続きをしようとしていた

 もう・・いいだろ?

 「あぁ、だからお前は会長と・・」
 
 会長とキスしたのが、うれしくて話そうとしているのか?
 それは・・あまりにも残酷すぎる

 「そう、私は会長さんとキスしたよ」

 晶はいとも簡単に、言ってのけた

 「・・でも、私の初キスの相手は会長さんじゃないの」

 「え・・?」

 な・・今、なんて言った?
 晶の・・ファーストキスの相手が・・別にいる・・と?

 「私は、私の初キスは絶対その人でありたいと思ってた。でも、その人とのキスする事は、たぶん一生ありえないと思うくらい、遠い存在の人で・・」

 晶に・・オレの知らない男の存在がいた・・?

 動揺が隠し切れず、カタカタと腕が震えた

 「でも、神様も私の気持ちを知ってて、偶然その人とキスする事ができたの」
 
 目を閉じていても、その男とキス出来た事がうれしいと晶の声が語っていた

 「晶・・・もういい。もうやめてくれ」

 最後の最後に、別の男の存在をオレに教えてどういうつもりなんだ?

 悲痛の声で晶に懇願したが、無駄だった

 晶は、語りかけるように話を続けて行った
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