神様、僕に妹を下さい

Act.332 サイド晶(あきら)

 「皇兄・・」

 私の呼び声に、皇兄は息をついて、私を見つめた

 「晶・・最期に、抱きしめてもいいか?」

 最期に・・こんな私を抱きしめてくれるなら

 「はい」
 私はゆっくりと返事をした

 皇兄はベンチから立ち上がると、座っている私をふわりと羽毛の様に抱きしめた

 温かい・・皇兄・・あったかい

 ごめんね皇兄・・私、あなたを幸せに出来ない存在でごめんね

 神様、もしも生まれ変われるなら、この人を幸せに出来る存在になりたい

 「ごめんな・・ごめん・・ごめんな晶」

 皇兄も、私の耳元でごめんと何回も繰り返していた

 「なんで・・どうして、皇兄が謝るの・・?」

 皇兄が、謝る理由は何もないのに

 「それは、オレの存在はお前を苦しめただけで・・オレはお前に何もしてやれなかったから。だから、ごめんな」

 震える声で、皇兄は私に謝った

 や・・・だ・・どうして、謝るの?
 皇兄が傍にいてくれるだけで、私は幸せなのに・・

 謝られたら、そんな風に言われたら・・・皇兄がくれた幸せを否定されているみたいでしょう?

 伝えなきゃ・・皇兄は私を苦しめていないと。幸せをくれてるって

 何もしてあげられないのは、私の方だって
 私の方が、あなたを幸せをあげれる存在ではないと、謝らなければならないのは私のほうだと・・

 私は、皇兄の胸にうずめていた顔をあげて、皇兄の顔を見た

 「お願い、そんな風に謝らないで。私、皇兄が傍にいてくれるだけで、私を幸せにしてくれたよ。だから、苦しめたなんて言わないで」

 私は目を伏せ、深く深くため息をついた

 「・・・でも、私は、私の方が・・皇兄には何もしてあげれないの。私がもらっている幸せを・・私は皇兄に返すことが出来ないの・・」

 ごめんね。ごめん・・

 「ごめ・・ごめんなさい。私の存在は、皇兄の幸せを奪ってしまう。私は・・・あなたの未来を壊したくない」

 泣くのを我慢していたのに、自分の不甲斐なさに涙が出る

 だから、皇兄が謝るのは間違ってるの

 「晶・・お前・・オレの幸せを?」

 「だって好きだもの・・好きな人には、幸せになってもらいたい。私は、皇兄には幸せでいてほしい。だから、ありがとう。こんな私を好きになってくれて」
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