神様、僕に妹を下さい

Act.086 サイド晶(あきら)

ピアノの音って妙に心地よく、私を元気にしてくれる
 がんばれって応援してくれるみたい

 「少し元気になった?」
 狩野先輩の問いに、私は大きく頷いた

 「おかげさまで、元気になりました」

 「今日はずっといられるの?」

 「えーと・・生徒会室の電気が消えるまでいるつもりです」

 皇兄に会って、ちゃんと謝らないと

 どうやら皇兄は放課後、生徒会室に缶詰状態だって聞いた。幸い音楽室から見上げると、生徒会室が見えて電気が点いているいるのが確認できた

 灯りが消えたら、皇兄を捕まえて一緒に帰るの
 
 すぐに生徒会室にいけば?って思うけど、集中している皇兄の邪魔はしたくない。これ以上迷惑をかける訳にはいかないのだ

 「もしかして、桜庭くんを待っているつもり?昨日も22時近くまでいたって聞いたよ」

 「はい。待ってます。家で待っていると眠っちゃいそうで・・」
 実際昨日、眠ってしまったのだ

 「クスクス。ここにいても眠っていたよ」
 狩野先輩は思い出したかのように笑った

 「え?!今は眠っていませんよ。起きてました」

 「今日は起きていたけど、君が初めてここに来た時、眠ってしまったんだよ」
 私がここに来た日・・って月曜日だ

 「僕が家まで送ろうと考えていたら、桜庭君が来て、君を背負って帰ったんだ。覚えてないの?」

 覚えてない・・どころか、そんな事実知らない

 あの日は、皇兄の様子がいつもと違うと感じた日。目が覚めると皇兄が目の前にいて、私の耳元を触ってきて・・酷い事言われて

 てっきり狩野先輩が送ってきてくれたものだと思っていた

 あれ・・?でも、確か萌ちゃんが言っていた。皇兄と沢村双葉とのウワサのきっかけが、皇兄が彼女を背負ってかえったのを見た人がいるからだと・・

 『暗くて顔までは見てないらしいけど、本人が自分だって言ってるみたいなのよね』

 という萌ちゃんの言葉を思い出す

 「晶ちゃん?」
 
 「先輩、今の話本当なんですよね」

 「あぁ」

 狩野先輩が嘘をつくはずはない
 
 嘘をついているのは、沢村双葉

 「先輩、私ちょっと行って来ます」

 「晶ちゃん?!行くって何処に?」

 「分からないけど、真相を確かめに」
 急いで音楽室を飛び出すと、1年2組、沢村双葉の教室へ走っていた
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