冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す
「仲が良いとは言い難いが…
前田は口は悪いが、頭はキレるし仕事は早いからな。」

香世はそんな正臣の懐の深さが誇らしく思う。

「ありがとうございます。だからボスに着いて来たいって思うんですよ。」
前田は素直に礼を言う。

「正臣様は本当に凄いと思います。
私なんかでも良いと言ってくれるんですから。」
香世は正臣に微笑む。
繋がれたままの手をまたぎゅっと握られビクッとしてしまう。

「私なんか…なんて言うな…。
香世は俺には勿体無いと思っている程だ。
自分の価値をまったく分かって無い。」

正臣は、自己評価の低い香世にどうにか自信を持たせたいと思っている。

本来なら由緒正しき伯爵令嬢だったのだ。
教養も礼儀作法も申し分無いし、
性格だって穏やかで優しくて、
それでいて謙虚だ。

それに、凛とした佇まいは誰もが真似出来るものでは無い。

「香世ちゃんは俺が会った令嬢の中で1番だよ。
見た目だけじゃ無くなにより心が綺麗だし、
だいたいの令嬢は俺達一般人を見下した目で見るのに、香世ちゃんは敬ってさえくれる。もっと自分に自信を持ってよ。」
前田がそう言うから、

「俺が言いたかった事をお前が言うな。」
と、正臣が苦笑いする。

「お世辞でも嬉しいです。」
正臣は照れたように頬を染める香世が可愛くて、独り占めしたい感情を抑え窓の外を見る。
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