冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す
前田の運転で病院へ行く。

「お疲れ様です。午前中にタマキさんを連れて病院へ行ったんですけど、まだ意識は戻ってなくて…、だけど呼吸も心拍も通常に戻ってきてるらしいのでもう直ぐです!」

「…そうか。香世が目覚めるまで帰って来るなと…大将からの命令だ。家にいてもやる事が無い。しばらく病院で過ごす事にする。」

せっかくなら香世が目覚めた時に側に居たいと正臣は思う。

「へぇ。大将にしては粋な計らいっすね。
俺もボスは働き過ぎだと思ってたんです。」
前田も働き過ぎだから、正臣は同じように休めと伝える。

途中、病室に飾る花と香世の好きな味噌まんじゅうを買う。

病室には香世の姉と樋口家の女中が付き添い香世の世話をしてくれていた。

「この度は、不甲斐ない自分のせいで香世を守る事が出来ず申し訳けありませんでした。」
正臣は深く頭を下げる。

「二階堂様、香世は元々こういう性分なのです。誰かの為に命を差し出す子ですから、
沢山の人質の命を守る事が出来て安堵しているはずです。
決して貴方のせいではありまんから、謝罪いはお止めください。」

姉からそう言われ、正臣は幾分か気持ちが救われた。

夕方頃、香世の姉達はまた明日来ますと帰ますと帰って行った。

香世と2人になりっきりになる。

「香世。」
と呼びかけても反応は無い。
頬や手先に触れると少し温かいのがせめてもの救いだ。

「香世、味噌まんじゅうが食べたいと思って買って来た。早く目覚めて一緒に食べよう。」
手を握りながら語りかける。

しばらくそうしていると正臣もいつしか寝てしまっていた。
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