冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す

悲しき現実 (正臣side)

こんなに嬉しくて、
そして辛い日はこの先なかなか無いだろう。

その後、駆けつけた医師の検査の結果、
香世は頭を打った衝撃によって一部の記憶が無くなっている事を聞かされる。

三年分…。

彼女が姉を通り魔から守って怪我をした
あの日の記憶までしか無い事が分かった。

今、彼女は自分がまだ15歳だと思っている。

俺の事はかろうじてあの時助けてくれた軍人とだけ認識されているらしい。

2人で過ごした数ヶ月は香世の記憶から消し去られた。

だけど、香世が意識を取り戻してくれただけで良かったと、込み上げる感情を抑えながら思う。

他は何も望まない。

俺は病院の廊下にある長椅子に座りながら天を仰ぐ。

あの時、香世の事を早く助けたい一心で、
知らない女だと、犯人に告げた自分の言葉が胸に刺さる。

このまま…

本当は彼女を自由にしてやるべきなのだろうか…。

俺では無い誰かと幸せになる香世を思い浮かべてみる。

とても無理だ…
彼女のいない人生なんて…

俺自身が到底、手離せそうも無い。

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